自社の顧客層のプロフィルを詳細に設定して架空の顧客モデルを作り上げ、その“人”に向けて商品開発、宣伝・販促をするマーケティング手法、あるいはモデルそのもののこと。属性によってターゲットを設定する従来型の手法の行き詰まり感から注目を集めている。想定顧客層へのインタビューなどを行い、価値観やライフスタイルを盛り込むのが特徴だ。

 もともとペルソナの手法は、顧客のコンピューターリテラシーに合わせて使い勝手の良い操作画面を作るという具合に、ソフトウエア開発やWebデザインの現場で採用されていた。これが商品コンセプトの設計や宣伝などマーケティング全般に広がり、Webサイトの制作でも活用が始まっている。

 たった一人の架空の顧客モデルに向けて売るという一見非効率な手法が注目される背景には、既存のマスマーケティングの行き詰まり感がある。これまでは性別、年齢、居住地といった属性からターゲットを設定していたが、消費者の嗜好や価値観は多様化した。例えば「30歳代の首都圏在住の未婚男性で…」と属性を絞り込んだ集団の中にも多様なニーズがあり、これに満遍なく応えようとすると、網羅的で焦点がボケた施策になる恐れがある。むしろ価値観やライフスタイルまで詳細に設定した特定の顧客モデルに向けて開発、宣伝する方が、その価値観に共感する消費者がついてくるというのがペルソナの考え方だ。従来型のセグメンテーションの否定ではなく、それに価値観など定性的なものを上乗せしてターゲットを明確にする手法といえる。

 顧客モデルは、架空だからといっていい加減な妄想で描くと失敗する。設定に当たっては、これまでの顧客データやアンケートなどから優良顧客層、有望な潜在顧客層を絞り込み、その一部の人に長時間インタビューをするなどして、購入につながる考え方や背景、価値観などを徹底して洗い出す。こうして浮き彫りになったライフスタイルや価値観を一人の顧客モデルとしてまとめ上げるのが一般的だ。