携帯電話事業者が定額で提供するパソコン向けのパケット通信サービス。
2007年春以降,携帯電話事業者が相次いでサービスを投入した。
利用制限の有無など,サービス内容は提供事業者によって異なる。

大量の小包(パケット)を気軽に送れるようになる
大量の小包(パケット)を気軽に送れるようになる
イラスト:今竹 智

 PC定額は月額料金が定額,もしくは料金に上限があるパソコン向けのパケット通信サービス。主にパソコンにデータ通信カードを挿して,携帯電話網経由でインターネットに接続するケースが定額の対象になる。

 携帯電話機単体でWebやメールなどのデータ通信をしたり,同一事業者のユーザー同士が通話したりする際の料金が定額になるサービスは既にあった。ところがパソコンを使ったデータ通信は,無線区間を行き交うトラフィックの予測がつかないこともあり,“定額ブーム”の蚊帳の外となっていた。

 そのためパソコンからの接続は,PC定額のメニューを提供していたPHSを使うのが一般的だった。ただしPHSは,データ伝送速度が総じて携帯電話よりも低速という弱点がある。

 携帯事業者のPC定額がそろってきたのは2007年後半のことだ。2007年春にサービスを開始したイー・モバイルのデータ通信サービスが,携帯電話事業者では最初のPC定額である。10月にはNTTドコモが,12月にはKDDIがPC定額を開始した。

 PC定額を使うことで,出先からのインターネット利用やリモート・アクセスを高速化できる。それに加えて,携帯電話回線をルーターにつないで固定回線のバックアップとして使うといった用途も考えられる。ユーザー企業による携帯データ通信サービスの利用機会は,今後も拡大していくだろう。

 ただしPC定額はどのサービスも同じではなく,通信事業者によって利用制限がある。NTTドコモのサービスは,基本的にはWebとメール,インターネットVPNの利用に限定される。KDDIのサービスは通信内容に制限を設けていないが,混雑時に大容量のデータを送受信すると自動的に通信速度が制御されるほか,一定時間内に極めて大量の通信があると切断される場合がある。