米インテルが提唱する小型インターネット端末。
PDA(携帯情報端末)とは異なり,パソコンと同等のWeb表現を可能にする。
プラットフォームはAtomプロセッサーとLinuxで実現する。

手のひらに乗る端末ながらWebの表現力はパソコン並み
手のひらに乗る端末ながらWebの表現力はパソコン並み
イラスト:今竹 智

 「MID」(mobile internet devices)は小型のインターネット端末。提唱した米インテルは,MIDを「電子辞書サイズながらフルスペックのパソコン」と表現する。

 インターネットにアクセスするにはパソコンか携帯電話を使うのが一般的。ただ,パソコンはブラウザの表現能力こそ高いものの,持ち歩くには重く,起動時間や操作性を考えると手軽さに欠ける。一方,携帯電話は小型軽量で通信機能を標準搭載しているが,ブラウザの表現能力ではパソコンにはかなわない。そこで,これらの長所を併せ持つ端末として登場したのがMIDである。

 MIDのCPUは,インテルが2008年3月に発表した,UMPC(ultra mobile PC)にも採用される予定の「インテル Atom プロセッサー」。OSにはLinuxを搭載する。Atomはパソコン用と同じx86アークテクチャに基づく。小型で消費電力はPDA用CPU並みだが,パソコン用のCore 2 Duoの命令セットと互換性を持ち,パソコンと同じソフトウエアが稼働する。パソコンに近い性能を確保するための仕組みも備える。このため,パソコンから Webコンテンツにアクセスするのと同じ使い勝手でリッチ・コンテンツを利用できるわけだ。

 MIDが最も威力を発揮するのは,モバイルWiMAXや次世代PHSといったワイヤレス・ブロードバンド・サービスが登場した後である。高速な無線環境を使えるようになれば,電車などでの移動中でも自宅やオフィスと同じ感覚でWebを利用できる。このためMIDは,ワイヤレス・ブロードバンドの起爆剤として事業者からの期待が高い。

 インテルは4月2日に開催したイベントで,今夏の端末発売を正式に表明した。既に海外の展示会では,中国のレノボやクラリオンなどが試作機を展示している。