「コンピュータ・ウイルス」という言葉が登場した当初は,正常なプログラムの一部を悪意のコードに書き換え,他のファイルに増殖を行うプログラムを意味した。感染・潜伏・発病という生物界のウイルスと似た活動サイクルを持つ点からこの名称が付けられた。フレドリック・コーヘン博士が1984年9月に米国のセキュリティ学会で発表した論文の中で「コンピュータ・ウイルス」という言葉を使用したのが最初とされる。

 現在では,広義にユーザーの意思にかかわらず不利益をもたらす不正なプログラム全般のことを指すケースが多い。この広義の意味の「ウイルス」は「マルウエア」「不正プログラム」と呼ばれることもある。

 また,現在でも本来の意味に近い狭義の使われ方として,「ファイル感染型」を特に「ウイルス」と呼ぶことがある。この場合,対義語になるのは「トロイの木馬」であり,不正なプログラムは,正常なファイルに上書きや追記を行う「ファイル感染型ウイルス」と,単体のプログラムである「トロイの木馬型」に大別できる。

 なお,ウイルス対策ソフトのメッセージとして見かける「駆除できませんでした」の「駆除」は「ファイル感染型ウイルス」に感染したファイルから悪意のコード部分のみを取り除くことを指し,「トロイの木馬」はファイルそのものが不正であり,丸ごと削除する処理となるため,その処理時には「駆除できない」という表現が用いられることがある。