通貨と同様に幅広く通用し、利用者間の受け渡しができるなどの性質を持つもの。電子マネーやポイントなどが代表格。消費者保護の観点で法整備が不十分な面もある。

 2007年10月、健康食品会社エル・アンド・ジー(東京・新宿)の「疑似通貨」をめぐる詐欺疑惑が報道されました。年利30%以上の高額の配当をうたって出資金を集め、独自の「円天市場」で買い物ができる疑似通貨「円天」を配当していました。

 詐欺の方便に使われるようになるまでに、世の中には疑似通貨が満ちあふれています。電子マネーやポイントが代表格です。

効果◆利便性の向上に

 疑似通貨による買い物はお金の勘定や釣り銭のやり取りがないので便利です。日本銀行によると、通貨(=紙幣と貨幣)のうち貨幣(硬貨)の流通枚数は2006年ごろから減少傾向にあり、将来的に電子マネーと硬貨は競合すると分析しています。

 例えば、JR東日本が発行する電子マネーのSuica(スイカ)は、通貨をカード(ICチップ)に「チャージ」しておけば、首都圏の交通機関や駅売店、コンビニエンスストアやスーパーなどで使えます。どこでも使えるという意味で、通貨に近い存在です。

 ビットワレット(東京・品川)の電子マネーEdy(エディ)には、「Edy to Edy」というサービスがあります。AさんのEdy対応携帯電話からBさんのEdyにお金を「送る」ことができます。こうした仕組みを「転々流通」と呼びますが、通貨の特性により近いといえます。小売店のポイントが電子マネーと交換できるなど、ポイントと電子マネーの融合も進んでいます。

課題◆消費者保護の不備も

 疑似通貨が続々と登場してきた一方で、法制度の整備が課題になりつつあります。日本の法律では、通貨を発行できるのは政府と日銀だけです。Suicaや Edyなどの電子マネーは「前払式証票法」という法律に基づいて発行されます。法的には通貨ではなく、百貨店の商品券などと同じ位置付けです。発行金額の半分以上の「発行保証金」を政府に供託する義務があります。

 ポイントも疑似通貨の一種ですが、発行企業は将来ポイントが使われるのに備えて引当金を計上します。例えば、家電量販大手のビックカメラは、118億5800万円(2007年8月期)もの「ポイント引当金」を負債として計上しています。

 このように疑似通貨の発行には財務面の裏付けが求められますが、全額が担保されるわけではありません。発行企業が経営破たんした場合、消費者は電子マネーの半分以下しか返金されなかったり、多額のポイントが使えなくなったりする可能性があります。疑似通貨が生活にますます密着するにつれて、消費者保護の仕組みや規制を求める声が高まりそうです。