複数のウェブ上のサービスや情報を組み合わせて、新しいサービスを作り出すこと。すべての機能を一から開発するより工数を短縮できるなどの利点がある。

 複数の酒や飲料を混ぜ合わせるとカクテルができ上がります。ベースになる飲料の味を受け継ぎながら、別のアルコール飲料として楽しめます。

 このカクテル作りと似た手法がIT(情報技術)分野にもあります。それが「マッシュアップ」です。ウェブ上の複数のサービスや情報を組み合わせ、新しいサービスを作り出すことを意味します。最近のインターネット・サービスの新形態を表す概念「ウェブ2.0」を象徴する例の1つとされています。

 本来は音楽の制作手法を指す言葉です。複数のアーティストの楽曲を持ち寄り、ある楽曲からはメロディーを、別のところからは歌詞を採用するなどの形態で、新しい楽曲を作成することを意味します。これが転じてIT分野でも使われるようになりました。

 マッシュアップが注目を集めるようになった背景には、自社サービスの機能を呼び出す仕組みをAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)として公開する有力サイトが相次いだことがあります。米グーグルや米ヤフー、米アマゾンなどが実施しました。

効果◆サービスの開発期間を短縮できる

 マッシュアップの利点は、他社が公開するAPIやデータを活用することで、サービスの開発工数を短縮できることです。また、地図情報といった自社で開発するには負担が大きいプログラムやデータベースを補うことも考えられます。

 APIとは、プログラミングで使う、機能を簡単に呼び出す仕組みのことを指します。ただしマッシュアップではAPIを通じて機能を呼び出すためのプログラムまで提供している例もあり、ブログやウェブに手軽に別のサービスを組み合わせることができるようになりました。例えば、ブログに地図や動画などの各種データを張り付けることが考えられます。

 半面、サービス提供に必要な機能を他社に依存する格好になります。このため、他社がサービスの公開を取りやめてしまうと、必要な機能が突然利用できなくなる恐れがあります。

事例◆飲食店情報に地図

 価格比較サイト「価格.com」などを運営するカカクコムは、飲食店の評価情報を集めたコミュニティー・サイト「食べログ.com」にマッシュアップによって他社サイトのサービスを導入しています。

 具体的には、グーグルの地図サービス「Google Maps」のAPIを活用し、地図データを飲食店の評価情報と連携させています。ウェブ・サイトの利用者が興味を覚えた飲食店の場所を、同じページに表示される地図データで確認できるわけです。