省エネ法(エネルギーの使用の合理化に関する法律)は,第2次石油危機を契機に1979年に制定された。その後,4回の法改正があり,現在,工場・事業場,輸送,住宅・建築物,機械器具の4分野において省エネ対策を定めている。

 工場・事業場における規制では,エネルギー使用量に応じて事業者を区分し,それぞれに果たすべき義務と目標とを課している。表1に,2008年4月現在の省エネ法で規定されている事業者区分と,取り組むべき義務と目標の一覧を示す。

表1●省エネ法で規定されている事業者区分と取り組むべき義務と目標
出典:省エネルギーセンター「省エネ法の概要 2007/2008」

 例えば,年間のエネルギー使用量が原油換算で3000キロリットル以上の工場・事業場は第一種エネルギー管理指定工場となり,それを設置する事業者は第一種特定事業者となる。この場合,エネルギー管理者の選任や,エネルギー使用状況の定期報告,エネルギー使用合理化のための中長期計画書の提出が義務づけられる。

 省エネ法は改正されるたびに,規制対象を拡大し,内容を強化してきた。2002年の改正では,工場・事業場における規制において,それまでの業種による制限が撤廃され,すべての業種を指定の対象としたほか,エネルギー消費の比較的少ない工場・事業場にも規制の対象を広げた。さらにビルを新築したり改築したりする際に,建築主や入居者が省エネルギー計画を作るよう義務づけた。

 一方,機械器具における規定では,98年に自動車と家電製品,ガス石油機器の省エネ基準に初めてトップランナー方式を導入した。トップランナー方式とは,市場で商品化されている製品のうち最も省エネ性能が優れている機器に基準を設定することで,機器全体のエネルギー効率の底上げを図ることを狙っている。現在,トップランナー方式を適用する「特定機器」に指定されているのは,エアコンや蛍光灯器具,テレビ,DVDレコーダーなど合計21種類ある(図1)。IT機器では,パソコンとサーバー(電子計算機),磁気ディスク装置が指定されている。

図1●トップランナー方式が適用される「特定機器」
エアコンや蛍光灯器具,テレビ,DVDレコーダーなど合計21種類が指定されている。IT機器では,パソコンとサーバー(電子計算機),磁気ディスク装置が含まれる。
出典:省エネルギーセンター「省エネ法の概要 2007/2008」

 さらに2008年夏にも,ネットワーク機器,具体的にはルーターとスイッチが特定機器に指定される見通しだ。それと言うのも,経産省が試算した2006年のIT機器の電力消費量は466億kWhで,このうちネットワーク機器は80億kWhと全体の17%程度にとどまるが,2025年にはネットワーク機器の電力消費量は1033億kWh,IT機器全体の43%を占めると予想されているからだ。実に2006年の約13倍に膨れ上がる見通しなのである。

 経産省では省エネ性能の高い製品の普及を後押しするため,トップランナー方式が適用される特定機器のうち,エアコン,テレビ,冷蔵庫の3品目を対象に,統一省エネラベル制度を導入した。この制度では,消費者が省エネ性能を一目でわかるように,製品のカタログなどに省エネ基準の達成率と年間消費電力量を示す。省エネ基準を100%達成するとマークの色がオレンジからグリーンに変わる。ただし,ラベルを表示するかどうかは義務ではなく,それぞれのメーカーが自主的に判断する。

 2007年11月末に経産省は,省エネ法の新たな改正案を公表。今回は,オフィス部門のエネルギー使用量の拡大に歯止めをかけるべく,規制対象を事業場ではなく事業者単位にし,コンビニエンスストアやスーパーマーケットといった新業種を加える案が盛り込まれた。