アドバゲームとは、商品や企業の広告を盛り込んだゲーム、またはゲームを利用した広告宣伝手法。初期はパッケージ形態のゲームで試みられたが、現在はインターネットを介したオンラインゲームが主流である。オンラインゲーム利用者の中心が10代後半から30代半ばの男性であり、同時にこの層のテレビ離れが相対的に進んでいることから、特に2005年以降、新しい広告宣伝媒体として注目を集めている。

 アドバゲームは、狭義には宣伝広告メッセージを組み込んだカスタムメイドの比較的単純なゲームを指す。90年代に登場した初期のアドバゲームの代表格は、米ブロックドット(Blockdot)のオンラインゲームである。「テトリス」をはじめ、伝統的なパズルやカードゲーム、アーケードゲームの定番などをオンラインで提供し、ゲーム内のパーツにスポンサーのロゴを使ったり、カードゲームのゲーム台にスポンサーのロゴを表示したりする形態が一般的である。商品キャラクターをゲームの駒として登場させるスタイルも多い。簡易版のプロダクトプレースメントと言え、現在も飲料・菓子メーカーや食品チェーンを中心にキャンペーンなどに利用されている。

 企業が広告宣伝媒体としてアドバゲームに関心を寄せる理由としては、ゲーム利用者の中核である若年男性が従来のマスメディアではリーチしにくいことに加えて、以下のような理由がある。

  • テレビCMなどに比べ、ゲームはユーザーに集中してもらえる
  • テレビ、パソコン、携帯電話、家庭用ゲーム機で利用でき、場所を選ばずアクセス可能
  • サイトを通じて利用者数や利用時間を正確に把握できる
  • テレビCMを制作・放送するよりも投資額が少なくて済む

 ブロードバンド回線の普及やパソコンの画像処理性能の向上に伴い、オンラインゲームでは2002年ころから多人数参加型のMMOG(massively multiplayer online game)/MMORPG(massively multiplayer online role playing game)が増加した。若い男性を中心に数百万人から2000万人規模のユーザーを集めるオンラインゲーム専門サイトも登場し、広告メディアとして急速に注目度が高まった。ただし当初は、ゲームの開始前に数十秒間の広告を流す形態が一般的だった。

 その後、ゲーム内の各種シーンに登場する看板やポスターなどに広告を掲載する、「アドバゲーミング(advergaming)」あるいは 「ゲーム内広告 (in-video-game advertisement、IGA:in-game advertisement)」と呼ぶ手法が登場した。最初はゲームのシーンに登場する街角の看板などに、あらかじめ決まったスポンサーの広告を“静的”に表示したり、自動車や飲料など特定の商品をアイテムとして登場させていたが、2005年3月に大手ゲーム会社である米ファンコム(Funcom)が米マッシブ(Massive)と共同で「ダイナミック・ビルボード広告」を開始。以降、シーンや時間帯に応じて“動的”に広告を差し替える「ダイナミック広告」が増え始めた。

 動的配信に対応したゲーム内広告の配信ネットワークとしては、米アトム・エンターテインメントの「Shockwave.com Immersive Network」、米マイクロソフトが2006年5月に買収を発表しMSN部門の傘下に入った米マッシブの「Massive Network」、米IGA ワールドワイドの「DIGA(dynamic in-game advertising)」、米フォックス・インタラクティブ・メディアの一部門である米IGN エンターテインメントの「In-Game Marketing Service」などがある。広告の表示場所は、街頭看板やポスター、車、ピザボックス、ソーダ缶、スクリーンセーバー、テレビ画面など。2006年7月には、米国トヨタが小型車「Yaris」の2007年モデルの広告として、FuncomのMMORPG「Anarchy Online」内で、初めてビデオ映像を使ったビルボード広告を配信した。

 日本国内では2006年9月ころから、ゲーム内広告の動的配信を狙った広告・マーケティング会社の設立などが相次いだ。オプトは、ゲーム関連のテクノブラッドやMOVIDA HOLDINGSなどと合弁でアドバゲーミングを設立。10月には、オンラインゲームのガンホー・モードとも業務提携した。サイバーエージェントは100%子会社としてアドプレインを設立した。またソネットエンタテインメント(旧ソニーコミュニケーションネットワーク)はゲームポットと資本・業務提携し、ゲーム内広告の開発・展開に乗り出している。

 このほか、ゲームそのものではないが、米リンデン・ラボ(Linden Lab)がインターネット上で提供する3次元仮想空間のコミュニティサービス「Second Life(セカンドライフ)」では、実在する企業が仮想空間内の各所に大小の街頭看板などを掲げており、ゲーム内広告の一種とみなせる。加えて、Tシャツなどの衣類の製造・小売り業の米アメリカンアパレルなど、店舗を構えて仮想空間の住民向けに“営業”している企業もある。