ジオターゲティングとは、Webサイト運用者や、バナー広告などを配信するアドサーバーの運用者が、Webサイト閲覧者の地理的な場所を識別して、特定の地域からのアクセスに対してだけ特別な情報を配信したり、地域に応じて異なる情報を配信し分けること。例えば実店舗を持つ企業が、商圏を限定して商品やサービスのネットプロモーションを展開する場合に、広告を配信する地域を絞り込むのが典型的な使い方である。Webサイト閲覧者の地域の特定には、IPアドレスなどを利用する。エリアターゲティング、地域ターゲティングとも呼ぶ。

 企業サイトでは、Webサイト閲覧者のアクセス場所に応じて、当該地域にある店舗の情報を表示したり、画面に表示する言語を日本語・英語に切り替えることなどが行われている。また、地域に閉じたプロモーションを実施する場合に、ジオターゲティングに対応した広告配信サービスを利用すると、対象外の地域に広告を配信する無駄が省ける。Webサイト閲覧者の居場所は、国・地域・都市・市区町村などのレベルで判別できるが、細かいレベルになるほど精度は落ちる。

 ブラウザがWebサイトにページを要求する「HTTPリクエスト」信号には、アクセス元のIPアドレスが含まれている。家庭からインターネットにアクセスする消費者のほとんどは、加入しているプロバイダ(ISP)から割り当てられたIPアドレスを使っており、プロバイダは地域ごとにIPアドレスの割り当て範囲を決めていることが多い。このため、IPアドレスを基にアクセス元の地域を、ある程度までは特定できる。また、日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)など、各国の公的な管理組織が自国内に割り当てるIPアドレスの範囲を管理しているので、アクセス元の国をIPアドレスから識別することが可能である。

 Webサイトの表示や広告の配信をWebサイト閲覧者の場所に応じて実際に切り替えられるようにするには、IPアドレスと国・地域・都市などとの対応データベースが必要である。世界各地にこうしたデータベースを作成・維持する専門会社があり、そこのサービスを利用すると、自前のデータベースを整備しなくても済む。例えば日本国内では、サイバーエリアリサーチが、IPアドレスと国・都道府県との対応データベース「SURFPOINT」をライセンスまたはASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)方式で提供している。

 一方、インターネットに専用線で接続している企業からのアクセスは、IPアドレスで地域を特定することはできない。ただし、IPアドレスとドメイン(nikkeibp.co.jpなど)、ドメイン所有組織名(企業名)との対応データベースを整備すれば、企業名などは特定できる。サイバーエリアリサーチは、企業の本社住所まで組み合わせたデータベースも提供している。

 ジオターゲティングによるバナー広告の配信サービスとしては、サイバーウィングがBIGLOBE向けに提供している「ジオターゲティングバナー」などがある。検索連動型広告では、グーグルのAdWordsや、オーバーチュアの「スポンサードサーチ」が対応している。これらの検索連動型広告では、IPアドレスのほかに、検索キーワードに含まれる場所に関連した用語なども利用して、配信する広告を選択する仕組みである。

 このほか、NTTレゾナントは自社のgooや提携サイトで、特定の地域に関する検索が行われた際の結果画面に、その地域に関連したテキスト広告を配信する「地域検索連動型広告サービス(エリアマッチ)」を提供している。IPアドレスなどを使ってサイト閲覧者の場所を特定するわけではないが、特定の地域に関心を持つサイト閲覧者にその地域に関連した広告を配信できる。