クリック詐欺とは、広告を掲載して収入を得ているWebサイトの運営者が自ら広告をクリックしたり、競合企業に広告費を多く支出させるために広告をクリックすること。クリックされた回数に応じて広告料が発生するPPC(ペイ・パー・クリック)広告の仕組みを悪用し、意図的に大量のクリックを発生させて多くのアクセスがあったように見せかける。クリックスパム(click spam)と呼ぶこともある。

 PPC広告には検索連動型広告やコンテンツ連動型広告があるほか、アフィリエイトプログラムでもPPC方式で報酬が発生するものが多い。クリック詐欺は、広告主から広告費をだまし取ったり、本来不要な広告費を支払わせるため、こうした主要なネットマーケティング手法を脅かす存在と言える。米ヤフーや米グーグルは、正当でないCPC広告費を支払わされたと広告主から提訴されるなど、決算開示情報の中でも事業のリスク要因としてクリック詐欺の問題を明記している。

 クリック詐欺の手法としては、人手を集めて広告を集中的にクリックする方法と、ソフトウエアプログラムなどで自動的にクリックを発生させる方法がある。人手によるクリックは、人件費の安い地域や国で組織的に大量に人を雇って行う場合もある。米クリック・フォレンジクス(Click Forensics)が、クリック詐欺検知サービス「Click Fraud Network」に参加する2500以上の広告主や広告会社から収集したデータを基に四半期ごとにクリック詐欺の発生率を公表しており、それによると2006年は14.0%前後である。ヤフーとグーグルに限ると、発生率は12%前後に下がる。

 これに対し、グーグルやヤフー(日本ではオーバーチュア)は、不正クリックの自動検知システムなどを利用してクリック詐欺に対処している。自動検知システムは、「AdWords(アドワーズ)」や「スポンサードサーチ」のクリックに対し、IPアドレス、発生時刻、重複するクリックの有無、クリック・パターンなどを監視して不正なクリックをリアルタイムで自動的に計数から除外する。また、疑わしい事例を調査・検証し、不正が認められた場合は、広告主への広告費請求を相殺する一方で、不正行為に対して法的措置を講じることになる。

 一方、アフィリエイトマーケティングの業界団体である日本アフィリエイト・サービス協会(JASK)は2006年10月、市場の健全な発展を目標に、順守すべき業界統一基準として「アフィリエイト・ガイドライン」を策定した。その中で、アフィリエイトプログラムに参加するパートナーに対しては、自動プログラムやリンクの偽装によるクリックの誘導、連続的で大量のクリック、架空の申し込みなどを不正行為に位置付けて禁止した。また、アフィリエイトサービス提供会社に対しては、パートナーの不正行為への対処と、協会を通じたサービス提供会社間での不正行為に関する情報共有と不正の撲滅を掲げている。

 なお、似た用語として「ワンクリック詐欺」がある。こちらは、メール広告や掲示板の偽装リンクを通じてパソコンまたはモバイル向けの架空請求サイトに閲覧者を誘導し、架空の利用料金や登録料金を請求する手口。クリック詐欺と呼ぶこともあるため、混同しやすい。