AISASとは、インターネットを積極的に活用する消費者の購買行動プロセスに関するマーケティング分野の仮説。ある商品を消費者が認知してから購買に至るプロセスを、「Attention(注意)」「Interest(興味)」「Search(検索)」「Action(購買)」「Share(情報共有)」の5フェーズから成り立つとした。電通が提唱し、2005年6月に商標として登録された。

 消費者の購買行動プロセスに関する仮説としては、従来「AIDMA(アイドマ)」がマーケティング関係者の間では有名だった。AIDMAは、「Attention(注意)」「Interest(関心)」「Desire(欲求)」「Memory(記憶)」「Action(行動)」という5プロセスを表す。AISASは、AIDMA同様に購買行動プロセスを5段階に分けながらも、インターネットを活用した新しい消費行動プロセスを取り込んだ考え方である。

 新しく加わった「Search」は、Yahoo!やGoogleなどの検索サービスの利用が一般化し、商品やサービスに関心を持った消費者が、「まずはネットで調べてみる」行動パターンを指す。最後の「Share」は、ブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、クチコミ・サイトなどを介して、消費者同士による商品の使用感や感想などの情報交換・共有が日常化してきた状況を表す。どちらも2002年ころから顕在化してきた消費者の行動パターンである。

 マーケティングの観点では、プロセスが商品の購買(Action)で終わらず、その後にShare(情報共有)を位置付けたのも象徴的である。実際、消費者のクチコミ情報が別の消費者の購買プロセスに大きな影響を与えるようになっており、広告などの商品提供側からの一方的な働きかけだけでは消費者の購買行動を後押ししにくくなっている。

 提唱者である電通がAISASを商標登録したためマス媒体で使用される頻度は低いものの、マーケティング関係者の認知度は高い。また、AISASをきっかけに、購買プロセスを細分化したモデルがマーケティング関係者から数多く提案されている。たとえば、アンヴィコミュニケーションズの望野和美社長が提唱した「AISCEAS(アイセアス)」は、AISASのSとAの間に「Comparison(比較)」と「Examination(検討)」を挿入したもの。