2007年6月に,米国でGoogleとIntelが中心となって設立したIT業界の非営利団体。パソコンやサーバーなどのIT機器のエネルギー効率向上と,電力消費量の削減を推進する。全世界のIT機器のCO2排出量を2010年までに年間5400万トン削減することを目指す。

 Climate Saversは,もともと国際環境保護団体のWWFと企業がパートナーシップを結び,企業の温室効果ガスの排出削減の計画と実施を行っていくプログラム。参加企業は温室効果ガスの削減目標を設け,計画的にそれを実行する。WWFと第三者認証機関が目標の内容や実行プロセスを検証し,認定する。本来は業種を問わないプログラムで,現在までに米Johnson & Johnson K.K.,米IBM,米Nike,フィンランドNokia,米Hewlett-Packardなど,全世界で15社が参加。日本からは佐川急便とソニーが参加している。

 コンピューティング・イニシアチブは,Climate Saversの中でもIT業界に特化した団体。GoogleとIntelのほか,米Dell,米Hewlett-Packard,米Microsoft,中国Lenovoなど100社を超える企業が参加を表明。日本からは,NEC,日立製作所,富士通などが名を連ねている。 IT機器ベンダーだけでなく,部品やソフトウエアのメーカーなども参加している。

 主な活動内容は,IT機器の省電力技術の開発と,電力消費を抑える使い方の普及。このプログラムに参加するコンピューター・メーカーや部品メーカーは,電力効率に関する一定基準に適合した製品の製造に取り組む。一方,ユーザー企業は,電力効率に優れたコンピューターなどの製品購入に取り組む。さらに一般消費者やIT部門を対象に,コンピューターのパワー・マネジメントに関する啓蒙活動を行う。米国政府のEnergy Starプログラムの消費電力基準に基づいて運用する。

 同イニシアチブでは特に重要な対策として,IT機器に搭載する電源を高効率な部品に変える,ユーザーはパソコンの省電力機能を設定する,という2つの取り組みを推奨している。この2つだけで,IT機器のエネルギー効率は50%改善すると見ている。

 電源部分でロスした電力の多くは,熱になって失われる。それを冷やすために,冷却装置が必要になり,また電力を消費するという悪循環が生まれている。一般に,パソコンに搭載されている電源の変換効率は5割程度。省エネ対策が進んでいるサーバーでも65%程度と言われる。すなわち,供給される電力が,AC(交流)からDC(直流)へ変換したり,変圧する際などに失われ,プロセッサなどに供給する電力が小さくなってしまっている。逆に言えば,この変換/変圧の効率が向上すれば,消費電力は大きく改善する。

 ただし,高効率の電源を採用すると,パソコンで20ドル,サーバーで30ドルほど高くなる。そこで,イニシアチブに参加しているIT機器ベンダーに,高効率の電源を採用するように呼びかけて量産効果を出し,部品価格自体を下げるべく動いている。それでも賄えない分については,政府や電力会社に補助制度の導入を働きかけていくという。

 一方でユーザーに対しては,マイクロソフトのWindowsなどに標準で搭載されている省電力設定の利用を呼びかけている。一定時間,パソコンを操作しないと自動的に休止状態になるといった機能は,電池の駆動時間を延ばしたいノート型では利用するのが当たり前だが,デスクトップPCでの利用率はわずか10%にすぎないという。

Climate Savers コンピューティング・イニシアチブ公式サイト