生産者(プロデューサー)と消費者(コンシューマー)を合成した造語。自分が欲しいと思う物を自ら発案して商品化したり、メーカーに働きかけていく進んだ賢い消費者のことを指す。

 ショッピングに出かけても、欲しいと思える商品が見当たらないという経験はありませんか? 欲しいと心を動かされる商品に出会える確率は、昔に比べて相対的に減っているのかもしれません。現代は“消費飽和の時代”といわれたりもしますが、良い商品に出会いたい欲求が消費者になくなったわけではないはずです。本当は無意識にメーカーに不満を感じているのではないでしょうか。

 そんな消費者の中から、「欲しい物は自分で作ってしまおう」と考える人が出てきても不思議ではありません。その瞬間、具体的なアイデアや技術、情報を持った消費者は生産者にもなるのです。このように、生産者にもなり得る進んだ賢い消費者のことを、両者を掛け合わせて「プロシューマー」と呼ぶことがあります。

 プロシューマーという造語が最初に登場したのは1980年代です。未来学者のアルビンEトフラー氏が有名な著書『第三の波』の中で、プロシューマーの台頭を予言しました。それから約25年が経過し、プロシューマーは現実のものとなりつつあります。

効果◆真に顧客起点な商品を生む

 プロシューマーを後押ししたのは、インターネットの普及です。世界中から最新の情報を仕入れ、メーカー顔負けの高度な知識や技術を持つ消費者が表れ始めています。自らのホームページやブログで情報を発信したり、世界中の同志たちと意見交換したりしている人も大勢います。そうした人たちがメーカーの力を借りずに作り上げた物の有名な例が、フリーソフトウエアのOS(基本ソフト)であるリナックスでしょう。

 メーカーにとって、プロシューマーは敵なのでしょうか。そうではありません。顧客起点の商品開発を指向する企業は今後、商品開発プロセスにプロシューマーのアイデアを取り込んでいくべきです。そのためには自社の情報を積極的に公開し、プロシューマーを呼び寄せる工夫が必要になります。

事例◆投票で商品化

 「無印良品」を販売する良品計画は2007年2月に、インターネットを使った消費者参加型の商品開発サイト「空想無印」をオープンしました。ここでは消費者自身が欲しい新商品のアイデアを提案したり、既存商品の改良を発案したりできます。特徴的なのは、消費者から投稿されたアイデアに対し、ほかの消費者の投票によって商品化を決めることです。投票数が1000票を超えると良品計画が商品化に動き出します。開始から半年後の同年8月、ついに1000票を獲得した提案が出現。そのアイデア「本に貼るための透明な付箋」を店頭に並べる準備を進めています。