競争のない未開拓の新市場を創造する方策を提示する経営戦略論。商品・サービスに差異化の要素を付加するのと同時に、取り除いたり減らしてメリハリを付ける。

 日本企業の業績は回復基調ですが、トップ企業でもかじ取りは楽ではありません。新製品を出した途端に、海外も含めた競合他社が追随してきます。流通業が仕掛ける激しい価格競争もあり、薄型テレビなどの家電製品では1年で数割の価格下落も珍しくありません。

 こうした市場で戦う限り、コストダウンの努力をいくら重ねても大きな儲けにつながりません。競争の激しい既存市場(レッド・オーシャン=赤い海)で戦うのではなく、競争がない未開拓の市場(ブルー・オーシャン=青い海)を創造したほうが有利です。その市場を作るための方策や分析ツールを体系的にまとめた経営戦略論が「ブルー・オーシャン戦略」です。ビジネススクール仏INSEADの教授であるW・チャン・キム氏とレネ・モボルニュ氏が書いた同名の書籍(ランダムハウス講談社)は、日本では2005年に発刊されました。

効果◆価値とコストの相克を打破

 ブルー・オーシャン戦略の中核にあるのは「バリュー・イノベーション(価値革新)」という考え方です。一般に、「高機能の製品は原価が高い」といった風に、価値とコストは比例関係にありますが、コストを抑えつつ価値を高める方策を提示します。

 具体的には、「4つのアクション」が重要です。製品・サービスに備わる要素(薄型テレビならインチ数、画質、各種機能など)を、業界の常識より「増やす」「付け加える」「取り除く」「減らす」という4つの行動を指します。「付加価値」という言葉はよく使われますが、ブルーEオーシャン戦略では逆に「取り除く」ことも同時に行うことによって、コストを抑えつつ新たな価値を生み出せると考えます。
 取り除いたり減らしたりする要素を決めたら、「戦略キャンバス(価値曲線)」というグラフを描いて、既存製品と比較します。既存製品と全く異なる価値曲線を描けるようなら、そこに新市場が見つかるかもしれません。

事例◆「時間」を価値に

 書籍で事例として取り上げられているのは、キュービーネット(東京・中央)です。同社は、「10分1000円」の理容店「QBハウス」を国内で約360店展開し、海外にも進出しています。QBハウスは、電話予約の受け付けや、洗髪・ひげそりなどのサービスを「取り除く」一方で、待ち時間やサービス時間を短縮し、スピードという価値を「付け加える」点が特徴です。仕事の合間などに気軽に来店できる「新市場」を創造し、高水準の来店客数を確保。サービスを大きく取り除いたことで、水回りなどの設備投資を軽減でき、低価格でも利益を出しやすい事業構造を確立しました。

(参考)日経情報ストラテジー2006年2月号「特集1・独自の新市場を開拓せよ! ブルーEオーシャン戦略の徹底検証」