グループで現実の経営課題の解決を実践する教育研修手法。リーダーシップの開発や、チームビルディングなどに効果を発揮する。

経営環境の好転に伴って、企業の人材開発、教育研修への意欲が再び高まっています。中でも次代を担う幹部候補生向けの教育は各社が力を入れるところ。経営理論などの座学にとどまらず、リーダーに必要な資質を磨き、組織運営にすぐに役立つ実践的な手法が求められるなか、注目を集めているのが「アクションラーニング」です。実際の経営課題の解決にチームで取り組み、調査や議論、合意形成などの行動を通じて参加者の意識の変革を促し、チームビルディングやリーダーシップ開発などを実現していくものです。

効果◆戦略策定にも活用

 アクションラーニングの起源は1930年代の英国にあるといわれていますが、本格的に普及するきっかけとなったのは、70年以降にゼネラル・エレクトリック(GE)やボーイングなど米国企業が採用したことです。特にGEは「BMC(ビジネス・マネジメント・コース)」などアクションラーニング手法に基づく研修を全世界で展開しています。BMCではリーダー人材がチームを組み、取引先へのインタビューなど現実に即した情報を基に経営戦略を策定して経営トップに提言します。こうした成果は、次世代経営幹部の選抜に役立てられるだけではなく、実際の経営戦略として採用される場合もあります。

 アクションラーニングではチームメンバー同士がお互いの行動や問題解決までのプロセスについて「振り返り」を行うことで、行動の妥当性やそこから生まれた成果について考察を深めます。こうした振り返りには、アクションに対する納得感を醸成しモチベーションを高めるほか、メンバー間のナレッジ共有を進めるといった効果があります。

 この場では、議論の仕切り役としてファシリテーターを投入する場合もあります。メンバーの本音を引き出し、表層に終わらない議論を展開するためです。

事例◆本音を引き出す

 東京電力では2005年から若手社員向けに、アクションラーニングに基づく人材育成プログラム「T!)P(テップ)」を提供しています。数人から成るチームが技術開発やビジネスモデル企画などのテーマに取り組み、約半年で成果をまとめて経営幹部にプレゼンテーションします。GEと同様、ここから生まれた戦略が実際のビジネスに反映される例もあります。

 この研修の一環として、登山や岩登りなど体を動かすメニューも導入しています。単に目標を達成するだけでなく、ルートの検討や役割分担などのプランニングを周到に行い、実施後は振り返りを実施して、プランの妥当性や成功の要因などを分析します。身体的に厳しい状況に追い詰める狙いは、メンバーの本音を引き出し、チームの結束力を高めることにあります。