現行PHSと次世代PHSの違い 次世代PHSと現行PHSの本質的な違いは,利用できる無線周波数の帯域が広がったことで高速通信が可能になったことのみ。1フレーム当たりの時間軸,セル,バックボーン・ネットワークの構成などは現行と次世代でまったく同じ。このため現行PHSとの部品などの共用や基地局の併用などが可能になっている。
現行PHSと次世代PHSの違い 次世代PHSと現行PHSの本質的な違いは,利用できる無線周波数の帯域が広がったことで高速通信が可能になったことのみ。1フレーム当たりの時間軸,セル,バックボーン・ネットワークの構成などは現行と次世代でまったく同じ。このため現行PHSとの部品などの共用や基地局の併用などが可能になっている。
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 次世代PHSとは,10年以上前に開発された現行PHSとの違いを最小限にとどめたまま,最大20Mビット/秒超へ高速化した技術である。2.5GHz帯を利用した無線ブロードバンド通信方式としてウィルコムが採用する予定。なお,2.5GHzの無線ブロードバンドにはKDDI系のUQコミュニケーションズが採用するモバイルWiMAXも利用される。

 現状,携帯電話サービスでは,上りと下りで別々の周波数を使う方式を採用している。これに対し,PHSは,上りと下りで同じ周波数を時間を分けて使うTDD方式である。5ミリ秒を一単位とし,これを2.5ミリ秒ずつ上りと下りで分けて利用する(図)。さらにこの2.5ミリ秒を4等分して4ユーザーを収容する。

 次世代PHSは,TDD方式に加えて5ミリ秒という時間単位も現行から引き継いだ。両者の本質的な違いは,利用する無線帯域の広さにある。

 次世代PHSでは,多数の搬送波を複数のユーザーで共用するOFDMA方式を採用している。また,無線LANの802.11nと同じMIMOも採用している。これらの高速化技術により,条件が良ければ,20Mビット/秒以上の通信速度が得られる。

 2008年1月より,ウィルコムでは現行PHS基地局と地上IP網をつなぐ回線の光ファイバ化を進めている。従来は基地局と地上IP網の間はメタル回線でつないでおり,最大でも800kビット/秒しか出なかった。このボトルネックを解消し,現行のPHSを最大1.6Mビット/秒程度にまで向上させる計画である。だが,この光ファイバ化は次世代PHSへの布石でもある。

 次世代PHSの基地局は,現行のPHS基地局と同じ場所に設置する予定。サービス開始当初は,現行と次世代PHSで,無線機は別々なものの,アンテナと光ファイバを共用する。アンテナを共用するのは設置スペースを節約するためだ。

 ウィルコムでは,2009年4月に次世代PHSの試験サービス,同年10月に商用サービスを始める予定だ。エリア展開は2011年度末に人口カバー率で6割弱,2013年度末に9割強とする計画になっている。月額利用料金は,4000円以下になる見込みだ。