システムの構成を、利用者から見た機能に影響を与えずに、柔軟に変えられる仕組みのこと。複数のサーバーを1台のサーバーのように稼働させるなどがある。

 この夏、関東地方の電力がひっ迫しました。東京電力の柏崎原子力発電所が停止したことに加え、猛暑によるエアコンの利用増で電力が供給できるか危ぶまれました。東京電力は他地域の電力会社から電力を購入するなど対応に追われました。ただ利用者の視点でみればコンセントにつなげば電気は使えるので、どこの電力会社から電力を供給されていようが気になりません。

 この状態を情報システムに置き換えると、利用者はアプリケーションが動きさえすればどのサーバーで動いていようが関係ありません。提供する機能は変えずに、システムの構成を、必要に応じて変化させる技術が「仮想化技術」です。複数台のサーバーを1台のサーバーのように使うこともあれば、1台のサーバーで仮想的に複数のサーバーのように別々なOS(基本ソフト)を動かすことも可能です。

 Javaを用いたゲームソフトはどんなOSのパソコンでも動作しますが、これはJavaが動くコンピュータ(仮想マシン)をOSの上で仮想的に構成することで、ハードウエアやOS環境を仮想化した例といえます。

効果◆ハードウエアを有効利用し管理を省力化

 近年、仮想化が大きく話題になっているのは、サーバーの仮想化です。これには、2つのニーズがあります。まず、社内に何十台何百台とあるサーバーを仮想的に統合して、管理を楽にしたいというニーズ。この数年間でウィンドウズやリナックスなど複数のOSが混在する環境を企業は作ってしまいました。これらが保守運用費用を上昇させてしまう要因でした。

 もう1つが、あるサーバーは能力が余っているのに、あるサーバーは能力不足であるといった過不足を、仮想化技術を使って柔軟に調整するニーズです。

 昼に使う国内支店向けアプリケーションと夜間使う海外支店向けアプリケーションといったように時間帯で負荷のピークが異なるアプリケーションを組み合わせれば、ハードウエア資源を有効活用できることになります。ほかにも、ウェブ・サイト上で物品を販売する企業が、注文が集中する時間だけ注文処理能力をほかのシステムから借りるといったことが可能になります。サーバー能力を個別の用途のピークに合わせる必要がなくなります。

 ハードウエアを最小限にすることは、電気代やスペースを削減することにもつながります。

事例◆サーバー数を大幅削減

 塩野義製薬は2003年12月に仮想化技術を取り入れたサーバーを導入しました。約130台あったサーバーを順次統合し、約20台に集約。同等の処理能力を6分の1の台数で実現したことで保守運用管理の手間が省けています。