図1 情報がばらばらだとユーザーを引き付けられない
図1 情報がばらばらだとユーザーを引き付けられない
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図2 そこで多数のサイトの情報をまとめ上げて提供しようというのがマッシュアップである
図2 そこで多数のサイトの情報をまとめ上げて提供しようというのがマッシュアップである
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 マッシュアップとは,複数のWebサイトが提供する情報をまとめて,一つのWebページを作ることを指す用語である。もともとは「複数の音楽を組み合わせて新たに音楽を作る」という意味の音楽用語であるものを,これをWebの世界に当てはめて使われている。

 これまでのWebでは,提供する情報ごとに別々のWebサイトになっているのが普通だった。例えばグルメ・サイトではレストラン情報,地図サイトでは地図情報,交通情報サイトでは時刻表情報を提供する,といった具合である(図1)。ただ,このままではユーザーにとって,複数のサイトにまたがる関連情報を集めるのが大変である。グルメ・サイトで検索したあとに,そこで得られた住所情報を基に地図サイトで地図を表示させ,さらに交通情報サイトで行き方を調べる,といった手間がかかる。

 そこで,サイト運営者側で情報をまとめたWebページを作ることでユーザーの手間を省き,Webサイトの魅力を高めようとするアイデアが生まれた。一つのWebページで,レストラン情報,地図,行き方といったユーザーが求める情報をまとめて提供するイメージである(図2)。これを実現するのがマッシュアップである。今のところ,検索結果に地図を組み合わせる情報提供サイトを中心にマッシュアップを使ったWebサイトが増えている。

 マッシュアップを実現するには,ほかのWebサイトの情報を取り込むことが必要である。もともとWebサイトは,Webページを生成するほかのWebサイトのソフトウエアが情報を集めるようにはできていなかった。人間なら,表示を見て的確にボタンを選択したり,キーワードを入力したりして欲しい情報を手に入れることができるが,ソフトウエアにはできない。他人の著作物であるほかのWebサイトの情報を使ってもいいかという権利上の問題を抜きにしても,マッシュアップを実現するのは難しかった。

 マッシュアップが実現できるようになったのは,ほかのWebサイトのソフトウエアが情報を引き出せるサイトが登場し始めてきたからである。これらのサイトは「Web API」というインタフェースを通して,ソフトウエアが加工しやすい形で情報を引き出せるようになっている。Web APIで決められた形式で情報を要求すれば,ソフトが処理できる形式で望む情報が送られてくるのである。

 マッシュアップ・サイトのソフトは,Web APIを使ってそのときの状況に応じた情報をほかのサイトから集める。例えば,まずユーザーが入力した文字列を基に,グルメ・サイトからレストラン情報を引き出す。次にレストラン情報に含まれる住所情報を基に地図サイトから地図情報を引き出し,さらに地図情報に含まれる駅の情報から時刻表情報を引き出すといった具合となる。これまでならユーザーがしていた作業をマッシュアップ・サイトのソフトが代行して,必要な情報すべてが含まれたWebページを作り上げる。

 ただし,マッシュアップ・サイトの構築はそれほど簡単ではない。Web APIはアクセス方法やフォーマットが統一されていないからである。情報を取り出すサイトのWeb APIに合わせてマッシュアップ・サイトのソフトを開発する必要がある。例えばWeb API上での住所情報の表現形式は,サイトごとに異なる。つまり,あるサイトのWeb APIから住所情報を取り出して,ほかのサイトに住所情報を伝えようとするときには,マッシュアップ・サイトのソフトが形式を変換する必要があることになる。

 このようなマッシュアップ・サイトの構築は,技術が必要で手間もかかる。このため,今のところマッシュアップ・サイトの大半は企業が構築したものである。ただ最近では,誰にでも簡単にマッシュアップ・サイトを作れるような支援サービスやツールも登場し始めている。例えばマイクロソフトが試験公開中のマッシュアップ・サービス「Popfly (ポップフライ)」は,難しい知識なしで使えるように工夫されている。マッシュアップ・サイト構築用のWebページ上で,アイコンで表現された情報提供サイトを配置することで,簡単に自分のマッシュアップ・サイトを構築して公開できるようになっている。