物件や企業、事業などを買収する際に、買収対象の価値やリスクを査定する作業。企業買収の場合は財務や人材、情報システムなどの実態を把握する。

 「デューデリジェンス」とは、投資を行う際に、本当に投資対象にはそれだけの価値はあるのか、リスクはどうなのか詳細に調査する作業を指す用語です。近年はM&A(企業の合併・買収)案件が増えていることから、買収前の事業を査定する作業を指す用語として目にするケースが増えています。規制緩和や投資ファンドの増加を背景にM&Aが常態化するなかで、デューデリジェンスの重要性も高まっています。

効果◆リスクを事前予測

 企業価値を査定するには、財務諸表を見るだけでは不十分です。「どんな社風か」「優秀な人材はいるか」「有用な特許を保有しているか」など対象企業内のあらゆる要素を把握し、評価する必要があります。それぞれ専門的な作業になるため、外部の第三者に委託することもよくあります。

 金融業に代表されるような、IT(情報技術)がビジネスを直接支えているような業態であるほど、情報システムに対するデューデリジェンスも重要です。『M&Aを成功に導くITデューデリジェンスの実務』(中央経済社)の著者の1人であるフューチャーアーキテクト取締役執行役員の山本真士氏は「企業買収額に比べるとITコストは比較的小さいため、買収の意思決定を左右することはまずない。しかし、システム連携やシステム統合がうまくいかなかった場合のビジネスリスクはきわめて大きいので、リスク対策といった観点からのITデューデリジェンスは重要だ」と指摘します。

 さらに、現状のシステムがM&A後にも役立ちそうか、といった点も重要です。例えば、被買収側企業のシステムの仕様が古いために、買収側企業のオペレーションには不可欠な日次の売上高が分からない、といった制約があればシステム改修を検討する必要があります。

 ハードウエアやソフトウエアだけではなく、情報システム部門の組織体制も評価の対象になります。部門の構成人員がベテランに偏って最新のソフト技術のスキルが乏しいといったケースもあり得ます。

 特定のベンダーとの取引関係が強固な場合、そのベンダーがM&A後に事業機会を失うことを恐れて抵抗するリスクも織り込まなければなりません。

事例◆金融庁がチェックリストを策定

 ITに対するデューデリジェンスが一般的になっているのが金融業です。金融庁は、32項目の「システム統合リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト」を策定。金融機関の経営再編などによるシステム統合に関するリスクを事前評価するように求めています。