来年春にも施行される公認会計士法の改正法。粉飾決算への関与など不正を働いた監査法人から罰金を取る「課徴金納付命令」を可能にしたのが大きな特徴の1つ。

 監査法人の不正行為に対する罰則規定を大幅に強化した「改正公認会計士法」が2008年春にも施行されます。2007年6月に衆・参両議院で改正案が可決され、原則として新法の公布日から1年以内に施行されることになっているのです。

 改正案の内容は、金融審議会公認会計士制度部会(部会長は新日本製鐵の関哲夫常任監査役)が2006年12月にまとめた報告書「公認会計士・監査制度の充実・強化について」に基づいています。

動向◆罰金徴収を可能に

 今回の公認会計士法の改正の特徴は行政処分の強化にあります。例えば、監査のやり方に問題がある場合、金融庁が監査法人の役員を一定期間だけ特定業務に関与できないように命令(解任)できるようにしました。

 さらに、粉飾決算に加担した監査法人に対し、顧客企業から受け取っていた報酬の1.5倍の課徴金を科することも可能になります。故意でなくても1.0倍の課徴金を科せます。

 現時点での金融庁による行政処分は「戒告」「業務停止命令」「解散命令」の3種類であり、前述のような「役員等解任命令」「課徴金納付命令」という処分はありませんでした。改正法ではさらに「業務改善命令」が加わるので、行政処分は6種類になります。監査法人の不正行為に対してきめ細やかな法対応が可能になるわけです。

 また、顧客企業に懐柔される状態を防ぐべく、公認会計士個人に対しても罰金が検討されました。不審な経理操作を発見した公認会計士が、顧客企業に有価証券報告書を訂正させなかった場合は罰金を科す案が議題に。ただし、法人への罰金との二重懲罰になるという意見が出て見送りになりました。

 同じ会計士が1つの企業を継続して担当できる期間は短縮されます。新日本やトーマツ、あずさといった大規模監査法人に所属する主任会計士の場合、最長7年だったのが5年となります。

効果◆SOX法強化に効果

 会計士法の改正によって監査が従来よりも厳しく実施されるようになり、話題の日本版SOX法(金融商品取引法)もより厳密な制度として機能すると見られます。改正会計士法と同じく2008年春の施行を見込む日本版SOX法は、内部統制報告書を有価証券報告書といっしょに提出することを義務づけています。この報告書に対し、監査法人や公認会計士による監査証明が必要だからです。

 このタイミングで法改正をするのは、旧カネボウや日興コーディアルグループなど不正会計事件が相次いだためです。監査法人や会計士に顧客企業をより厳しく監視するよう圧力をかけることで、粉飾決算に荷担する不祥事を防ごうという金融庁の狙いがあります。