大規模な情報システムを部品化された構造で設計する手法。企業の業務プロセスを「サービス」という部品単位に分解し、部品同士を標準技術によって連携させる。

 ある日突然、他社と提携・合併したり、事業部門を買収・売却したりと、経営環境の変化はますます激しくなっています。顧客の要望や法規制の変化によって、企業情報システムの変更を迫られることもあるでしょう。システムを改修しやすいように作っておく必要性が増しています。

 いったん作ったシステムを変更する時の大きな阻害要因は、様々な業務に対応したソフトウエアが内部で複雑に絡み合った、いわゆる“スパゲティ”のような状況です。こうなっていると、一部分だけ変更したつもりが、思わぬ部分に影響が及んでシステム全体がおかしくなることさえあります。

 ソフトウエア技術者の間ではこうした問題を避けようと、システムをモジュール(部品)構造化する手法が長年に渡り研究されてきました。改修しやすい構造を作る設計手法の中で2004年ごろから有力視されているのが「SOA(サービス指向アーキテクチャー)」です。

効果◆変化に強いシステムに

 SOAではシステムを「サービス」という単位に分解された部品の集まりと考えます。一つひとつの部品は「受注」「在庫引き当て」といった業務アプリケーションになっており、互いにデータや機能を呼び出す手順が標準化されています。この連携には、XML(拡張可能なマークアップ言語)やWSDL(ウェブサービス記述言語)など、ウェブ関連の標準技術がよく使われます。

 こうした構造により、業務プロセスが変化した時に、複雑なシステムの中から変更すべき部品を簡単に探し出せるようになります。その部品のプログラムだけを修正すればよいため、変更にかかる手間やコストも軽減できます。

 ただし、SOAを支える技術の標準化はまだ完全ではありません。「いったん作った部品はハードウエアなどに依存せずに組み合わせて使えるといわれるが、実際にはベンダーが意図的に『方言』を作り互換性を不完全にするなどして、ユーザー企業を囲い込むのでは」と懸念する声もあります。

事例◆データ資産を流用

 カシオ計算機は、システム変更のスピードを速める狙いで、いくつかの情報システムをSOAの考え方で構築しています。今年4月に稼働した「新購買システム」では、間接材の購買業務で必要になる「検収サービス」「取引先情報取得サービス」など約60個の部品を組み合わせています。将来的には、特定部門しか参照できなかった各種業務データを必要に応じて取り出すようなシステムを開発する時に、部品を再利用して工数を削減できると見ています。