自由に使える可処分時間の長短に応じた消費動向のこと。「忙しいからこそ売れる」「暇な人しか買わない」といった相関性に注目する考え方。

 消費動向を最も左右するのは「どんな人が可処分所得が多いのか」なのは言うまでもありません。ですが、より市場を掘り下げて調べるには、所得以外の要素に目を向ける必要もあります。特にレジャー用品などの市場には、ライフスタイルの変化も大きな影響を与える可能性があります。

 そこで「可処分時間別消費」という市場分析が注目を集めています。個人が自由に使える時間に応じて生まれる消費のことです。例えば残業時間が増えたり、これまでよりもワークライフバランスを重視した勤労者が増えたりすれば、どんな消費の変化があるのか、といった話題はこうした分析から推定できるというわけです。

 今年3月にこの調査を実施した日本経済新聞社産業地域研究所によると、こうした切り口はこれまであまり調査データがありませんでした。しかし、マクロ的に現金給与総額や消費支出の伸び悩みが続くなかでは、所得以外の要因が市場動向を左右するケースが増えている可能性があり、そこで可処分時間に着目したと調査の背景を説明しています。

効果◆忙しい人の意外な消費傾向が分かる

 産業地域研究所が首都圏と近畿圏の655人に余暇時間や消費動向を尋ねた調査で、意外な一面が浮かび上がった例は、家族でレジャーを楽しむ目的で購入されると考えられる国産ミニバン・RVの保有率と余暇時間の相関です。一番保有率が高いのは「休日の余暇時間が10時間以上ある」と答えた層で41.2%なのですが、2番目は「0~3時間」で、以下「4~5時間」「6~9時間」と続き一定時間以下では忙しい人ほど保有率が高いという結果になりました。

 また、「月に2回以上スポーツ・フィットネス施設に行く」割合と余暇時間の相関を調べたところ、男女を問わず一番多いのは平日の余暇時間が「1時間未満」という最も忙しい層でした。

 こうした結果からは「忙しい父親こそが『楽しい家族の休日』というイメージと満足感を得るためにミニバンを買い、また、猛烈に働く人ほど健康維持に消費する」(同研究所)といった傾向が読み取れます。

事例◆「7日間集中」でヒット

 可処分時間が少ない人を意識的に狙ったと思われる商品が米国のエクササイズビデオ「ビリーズ・ブートキャンプ」です。今年6月には出演しているインストラクターの来日が話題になりました。このビデオは「新兵向けの訓練キャンプ」というコンセプトの新鮮さもさることながら、購入者は「7日間集中」という宣伝文句にも引かれるようです。1日分は1時間足らず。「7日で終わる」という期待感は可処分時間が少ない人にとって強力な購入動機になったのでしょう。