草の根型のユニークなビジネスモデルで急速に普及が進んでいる公衆無線LANサービス。日本では2006年12月に開始した。約150カ国で展開している。

 外出先でデータ通信を行う際に便利なのが公衆無線LANサービスです。携帯電話に比べて通信速度が速く大容量のファイルのやり取りもできます。これまで同サービスが提供されるエリアは繁華街が中心で住宅街などは手薄でした。サービスを提供する通信事業者が採算性を確保しながら展開するにはどこでもいいというわけにはいかないからです。

 こうした利用可能エリアの狭さと、採算性の課題を解決するビジネスモデルを打ち出した公衆無線LANサービスが日本で2006年12月から始まりました。それが、「FON」というサービスです。スペインのベンチャー企業「FON」が世界約150カ国で展開するサービスで、全世界で約40万人が利用しています。

効果◆草の根のインフラ

 FONの特徴は、利用者同士が協力し合って、草の根運動でインフラを整備していることです。FONの会員になるためには自身で自宅などにアクセスポイントを設置しなければなりませんが利用料は無料です。この草の根のアクセスポイントを設置するために必要な機器は「FONルーター」というもので1980円で家電量販店の店頭や通信販売で購入可能です。これをインターネットにつなぎ、ほかのFON会員に開放する見返りに、外出先や海外でも別のFON会員が設置した端末を無料で利用できます。将来的にはアクセスポイントを設置しなくても利用できる有料会員制度も発足の予定です。

 1つのアクセスポイントができるとその半径50m以内が新たなサービス提供エリアになります。アクセスポイントの設置状況は「FONMaps」と呼ばれる同社のウェブサイト上で確認できます。

 日本法人のフォンジャパン(東京・世田谷)によると、国内では6月下旬時点で3万人強の登録者がいて約1万7000のアクセスポイントがあります

事例◆鍵はISPの説得

 フォンジャパンでは、国内で年内に7万5000カ所までアクセスポイントを増やす目標です。

 ただしFONの課題は、インターネット・サービス・プロバイダー(ISP)との契約問題です。FONは自前の通信インフラを持たないため、各利用者が契約するISP業者の回線を使用します。しかし、契約約款で第三者に対して回線を開放することを認めていない事業者もいます。

 このために国内ではエキサイトなど5社のISPと提携済みですが、残りのISPの説得次第で、今後の成長力は変わるでしょう。

 また、これまでFONのアクセスポイントは自宅や自営業のオフィスなどが多い代わりに、繁華街が手薄でした。そこで、今年中にレストランなどに、フォン・ジャパンが重点的に配備する計画です。