ソニー・コンピュータエンタテインメントのゲーム機「PLAYSTATION 3」(以下,PS3)にLinuxをインストールして利用すること,もしくはPS3で動かせるLinuxディストリビューションのことを総じて,「PS3 Linux」と呼びます。PS3 Linuxは,2006年11月のPS3の発売と同時に,インターネット上などで話題になり,現在では「Yellow Dog Linux」や「Fedora」,「Ubuntu」,「Momonga Linux」などのディストリビューションが,PS3で利用できるようになっています。

 PS3 Linuxは,利用方法によって,大きく2つに分けられます。1つは,パソコンと同じように,PS3に内蔵されているハード・ディスクにLinuxをインストールする方法です。もう1つは,ハード・ディスクを使わずに,光メディアやUSBメモリー,ネットワーク経由などでLinuxを起動する方法です。

 インストールが不要なディストリビューションには,OS Circularが開発した,ネットワーク経由で起動する「HTTP-FUSE PS3-Linux」や,ディスクのバックアップなどの用途に特化した,USBメモリーなどから起動する「PS3 SAK」があります。

 前述した「Yellow Dog Linux」や「Fedora」,「Ubuntu」,「Momonga Linux」は,すべてハード・ディスクにインストールするタイプです。これらは,さらに2つに大別できます。

 1つは,PS3にインストールするすべてのファイルを1枚のインストール・メディア(DVDやCD)に収めた,「PS3対応版」です。「Yellow Dog Linux」や「Ubuntu」がこれに該当します。

 もう1つは,「PS3 Linux Distributor's Starter Kit」と呼ばれるメディアと,汎用のppc(PowerPC)用インストール・メディアを組み合わせて,PS3で使えるようにした「汎用版」のディストリビューションです。汎用のインストール・メディアを使うため,インストーラや初期設定などは,PS3用にカスタマイズされていません。「Fedora」がこれに該当します。

 いずれの場合も,ppc用のディストリビューションがベースになっています。PS3は,「Cellプロセッサ」と呼ぶ高性能なCPUを搭載しています。Cellは,PowerPC互換のコア(PPE)と独自の演算プロセッサ・コア(SPE)を組み合わせたプロセッサです。PS3で使えるディストリビューションがppc用と兼用だったり,ppc用をそのまま利用したりするのは,このためです。

 なお,PS3で使えるディストリビューションについてより詳しくは,「PLAYSTATION 3で楽しむLinux」をご覧ください。