図1 別の場所に移動すると慣れない環境で仕事がはかどらない(イラスト:なかがわ みさこ)
図1 別の場所に移動すると慣れない環境で仕事がはかどらない(イラスト:なかがわ みさこ)
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図2 机の周りごと移動すればどこでも同じ環境で仕事ができる(イラスト:なかがわ みさこ)
図2 机の周りごと移動すればどこでも同じ環境で仕事ができる(イラスト:なかがわ みさこ)
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 Webデスクトップは,デスクトップ画面をWebブラウザ内で実現するサービスのこと。ここでいうデスクトップとは,パソコンを起動すると表示される基本操作画面のことである。デスクトップ画面は自分の使いやすいようにカスタマイズできる。例えば,壁紙を自分の気に入った絵や写真に変更する,頻繁に使うファイルやアプリケーションのショートカットを作成する,ゴミ箱やフォルダを画面の定位置に置く,などである。

 ただし,せっかく自分好みにデスクトップをカスタマイズしても,有効なのはあくまでそのパソコンだけ。ほかのパソコンを使うときには,また別のデスクトップになってしまう。自宅のパソコンのデスクトップをいくら使いやすいように変更しても,会社や出先のパソコンでは利用できない。例えて言うと,たまには外に出て仕事をしようとしてみても,使い慣れたツールがそろってなくて仕事の効率が上がらないようなものだ(図1)。

 こうした不便さを解消するサービスとして登場したのが,Webデスクトップだ。Webデスクトップなら,カスタマイズした情報はインターネット上のサーバーに保存される。デスクトップを,いわゆるWebサービスとして実現するため,世界中のどのパソコンからでも,Webブラウザさえあれば自分のデスクトップを再現できる。先ほどの例で言うと,作業をする自分の机の周辺ごと車で移動できるようにしたようなものである(図2)。どの場所に行っても,ペンや定規といった文具,あるいはコーヒーといった仕事中に使うものが,いつでも同じところにあってすぐに使えるという環境が実現できる。

 インターネット上のサーバーとの間の通信には,Webアクセス用のHTTPとHTTPSを一般的に使う。このため,ファイアウォールやブロードバンド・ルーターが途中にあっても,Webアクセスができれば基本的に利用できる。

 Webデスクトップでは,サーバーとの通信を必要最小限に減らし,操作に対するレスポンスを向上させることで,ユーザーがなるべくストレスを感じずに操作できるように工夫している。単純なHTMLではなく, Ajaxなどの技術を駆使し,Webデスクトップを利用するパソコン上で多くの処理をこなすようにしている。

 ただし,作り込んでいることで,Webデスクトップを利用する環境が制限されることもある。例えば, WebブラウザとしてInternet ExplorerとFirefoxでは使えるが,Operaでは利用できないといったサービスもある。

 Webデスクトップを使うときには,アプリケーションにも注意が必要だ。WebデスクトップはWebブラウザ内で実現しており,通常のデスクトップで利用しているアプリケーションをそのまま利用することはできない。その代わりにWebデスクトップでは各サービス事業者があらかじめ組み込んであるアプリケーションを利用する。代表的なものは,メール,Webブラウザ,メッセンジャといった通信系をはじめ,ワープロや表計算ソフトといったオフィス系などがある。

 このほかのアプリケーションで,Webデスクトップとして特徴的なのはファイル・マネージャだ。Webデスクトップのファイル・マネージャで保存したファイルはインターネット上のサーバーに保存される。そのため,同じWebデスクトップにログインすれば,別のパソコンからでもそのファイルを利用できる。つまり,異なるパソコン間のファイル共有に使える。

 いろいろと便利なWebデスクトップだが,アプリケーションが限定されるため必ずしも自分のやりたいことすべてを実現できるとは限らない。現時点では,Webデスクトップの便利な点を生かしながら,既存のデスクトップやアプリケーションを併用するというのが現実的といえる。