事業が存続できなくなるリスクを事前に分析・想定し、継続に必要な最低限の業務や、復旧時間と対応策などを定めた包括的な行動計画のこと。

 ここ数年、世界的にテロやインフルエンザ、地震などが相次ぎ、日本企業も少なからずその影響を受けてきました。もはや、こうしたリスクを全く想定せず経営を行っているのでは、無防備だと批判されても仕方のない状況が続いています。

 そこで有事を想定して、いかにビジネスを継続させるかを事前に定めた総合的な対応策が「BCP(業務継続計画)」です。

効果◆事業継続を確保

 BCPは、災害時に社員の安全を確保するため行動マニュアルを作るといった狭い範囲の準備を指すものではありません。目的を事業存続に置き、平時からの教育訓練や定期的な見直しも含めたマネジメント計画です。

 BCPはまず、事業が存続できなくなる事態はどんな状態があり得るのかというリスクとそのインパクトの評価から始まります。そして、そのなかで、地震や大規模火災、テロ、戦争といった有事が発生した場合、初動で何をすべきかを定めます。緊急本部はどう設置して指揮命令体制を確立するのかといった視点から検討します。さらに、事業を継続させるには、どの業務が最低限必要なのかという検討と、その復旧手順などを定めます。例えば、本社が被災地となって本社業務の継続が無理だとすれば、本社機能を代替して行う拠点をどうするかといった検討も必要です。システム面では、基幹的な処理を遠方のデータセンターに切り替えるといったシステムの多重化なども検討課題です。

 特に製造業の場合は、SCM(サプライチェーン・マネジメント)全体をどう維持するのかという検討も重要になります。近年、余分な在庫をチェーン全体で切り詰めてきただけに、それに見合う事業継続計画が必要になっています。

事例◆中越地震で効果

 東海地区は東海大地震が意識されてきただけに、BCP策定に積極的な企業が多い地域です。ヤマハ発動機もその1社です。工場が火災に遭うといった様々なリスクに備えて、危機対策マニュアルを作成しています。有事に、製品供給をいつまで継続できるのかという検討を3日以内に実施し、7日以内に復旧後の増産計画の策定など明確に決めています。各工場には、スコップや発電器など復旧するための道具も備蓄しています。

 復旧対策本部が初めて活動したのが、2004年の新潟県中越地震でした。速度計の購入先である日本精機が被災しました。日本精機の生産管理システムが停止してしまったため、納入数が分からずヤマハ発の生産にも影響を及ぼす事態となりました。備蓄していた救援物資を積み込んで、製造機械の復旧に当たるなど影響が最小限になるように取り組みました。