製品開発・設計部門を主対象とした生産性向上のための業務改善手法。日本能率協会グループが東京工業大学との共同研究で90年代初めに開発した。

 改善提案を募っても暇な人がやるものだと現場が思っていたりと、改善活動を軌道に乗せるには風土改革が必要なことは少なくありません。

 こうした課題を乗り越えるために開発された業務改善手法の1つが1990年代初めから普及が始まった「技術KI計画」です。日本能率協会(JMA)グループが東京工業大学との共同研究により開発しました。もともとはホワイトカラーの生産性を高める手法を研究していたのですが、途中から、製品の開発・設計を担うエンジニアリング部門の生産性向上にテーマを絞りました。JMAグループはこれまで450社以上に技術KI計画を指導し、プロジェクト型業務であるチーム営業やシステム開発などでも成果が上がるとしています。

効果◆意識共有を進める

 技術KI計画の基本コンセプトは、あるプロジェクトに参画する経営者やマネジャー、エンジニアなどの問題意識を可視化して共有することにより知的生産性を高める、というもの。日本能率協会コンサルティング(JMAC)の高橋豊氏は、「プロジェクトに対する問題意識はメンバーそれぞれ異なるのが普通。それを表に引き出して、みんなが同じ方向を見るようになれば、生産性は高まる」と解説します。

 技術KI計画は4つの手法で構成されます。(1)週1回2時間以上の頻度で開催する上下関係を越えて本音で話す場「ワイガヤミーティング」、(2)模造紙と粘着メモ紙を使って作る「見える計画」、(3)個々の役割を明確化して上司が合意するプロセス「合意納得&契約マネジメントスタイル」、(4)業務の振り返りプロセス「YWT(やったこと・分かったこと・次にやること)」です。(2)~(4)はワイガヤミーティングの中で実行します。また、見える計画は主に7つの図で構成されます。最初に従来のプロジェクトの進め方の悪い点を図示した後、今回のプロジェクトの目的、期待する成果、課題、役割分担、1~3カ月の中日程、1~2週間の小日程を図にしていきます。

 JMACによれば、技術KI計画を企業の組織風土として定着させるには1年はかかります。(1)~(4)の細かなやり方は各社に合ったものに徐々に改善しなければ、「やらされ感」が出てきてしまうからです。

事例◆帝人が全社改善活動に採用

 帝人は2004年から改善活動を推進したものの、組織によって取り組みに温度差がありました。そこで、グループ共通の業務改善手法の1つとして、技術KI計画を4職場に2005年下期から導入。プロジェクト的な業務の進め方をする2職場ではコミュニケーションが活性化し、知的生産性が高まる成果があったといいます。帝人は同手法の横展開を図る予定です。