図 緊急地震速報を実現するネットワークの構成
図 緊急地震速報を実現するネットワークの構成
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 緊急地震速報とは,地震の被害を最小限に抑えるために,実際に揺れる前に気象庁が配信する地震に関する情報である。緊急地震速報は,企業などに向けた緊急地震速報の配信は2006年8月に開始。7月の中越地震では緊急地震速報を受信した企業が安全のために設備を停止させるケースが多くあったという。2007年10月に緊急地震速報の個人向け配信が始まった。

 緊急地震速報は,地震を最初に観測してから数秒~10数秒で届けられる。地震が伝わる速度は秒速4km程度なので,震源から数十km離れたところなら揺れる前に情報が得られる計算だ。

 緊急地震速報は,気象庁が全国約200カ所に設置した地震計で観測したデータを基に作る(図)。地震計の観測データは,フレーム・リレー網経由で気象庁に集まる。万一フレーム・リレー網が使えなくなったときには,バックアップ用のISDNでデータを送る。

 気象庁は,集めた観測データを緊急地震速報サーバーで分析する。実際に大きく揺れる前の初期微動のデータだけで,地震の震源と大きさを計算する。複数の地震計の観測データを合わせて分析するのが原則だが,1台だけでも「揺れの方向や周期などから震源と大きさを割り出せる」(気象庁)。さらに緊急地震速報サーバーは,地域ごとの予想震度と地震到達時間を計算。この情報を盛り込んだ緊急地震速報を作り,気象業務支援センター経由で配信する。

 緊急地震速報は直接受信することもできるが,一般の企業や個人は通信事業者や配信事業者,放送局を経由して受信することになる。例えばNTTコミュニケーションズは,緊急地震速報をIPv6マルチキャストで配信するサービスを提供する。宇宙通信は衛星通信で同報する。このような形で配信される緊急地震速報のデータには,全国各地の震度情報が含まれている。ユーザーが受信用のソフトや端末を使って,緊急地震速報から自分の地域の情報を取り出して「8秒後に震度6」といった表示をさせる。

 一方,携帯電話事業者は緊急地震速報をメールで一斉配信するシステムを開発中。携帯電話事業者が緊急地震速報データを分析し,大きく揺れる地域にだけ配信する。