文・高畑 和弥(日立総合計画研究所知識情報システムグループ 副主任研究員)

 2007年7月26日、IT戦略本部は「重点計画-2007」を発表しました。これは2010年度までの国家IT戦略を定めた「IT新改革戦略」を実現するための年度別の施策集です。

 既に2007年4月にはIT新改革戦略の実現に向けた取り組みを加速させるために「IT新改革戦略 政策パッケージ」が発表されています。政策パッケージが今後のIT政策に関する基本的な方向性を取りまとめたものであるのに対して、重点計画-2007は各府省の予算への反映を念頭において、どの府省が何をいつまでに実施するかを施策レベルに落とし込んだ内容となっています。

 重点計画-2007では、具体的な施策を「政策パッケージを推進するための施策」と「IT新改革戦略のその他の政策を推進するための施策」の大きく二つに分類しています。さらに、前者では政策パッケージと同じ章立て、後者ではIT新改革戦略と同じ章立てで、施策を詳細に分類しており、電子政府・電子自治体に関する取り組みはその両方で取り上げられています。

 まず、「政策パッケージを推進するための施策」では、「国・地方の包括的な電子行政サービスの実現」という政策群の中で、2010年度をめどに次世代電子行政サービス基盤の標準モデルを構築するための施策などが掲げられています。例えば、

  • オンライン手続きにおける利用者の行動フロー分析・ニーズの把握
  • 府省間および国・地方間のバックオフィス連携のための業務棚卸し
  • 国と地方公共団体の情報システムのデータ標準化
などが実施される予定となっています。

 また、「IT新改革戦略のその他の政策を推進するための施策」では、「世界一便利で効率的な電子行政」という政策群の中で、2010年度までにオンライン申請の利用率を50%以上とするための施策や業務・システムの最適化を推進するための施策が掲げられています。例えば、

  • オンライン利用促進のための行動計画の着実な実施
  • 「電子自治体オンライン利用促進指針」などを踏まえた取り組みの推進
  • 政府調達の改善
  • 地方公共団体のシステムの共同化の推進
などが実施される予定となっています。

 重点計画-2007は、施策として採用する条件の明確化、評価体制の充実強化など、前年の重点計画-2006の基本的な特徴を継承しています。今回、重点計画として採用された施策は、行政、産業、交通、人材、医療など国民生活の広い範囲に及んでいるため総花的な印象を持たれがちですが、実際には採用する施策の条件についても以下の通り明確に定めています。

  1. 目標実現に向けた方策などを具体化する施策
  2. ITによる構造改革の推進、利用者・生活者重視、競争力強化といった視点を踏まえた施策
  3. PDCAサイクルの中で必要により見直しなどが行えるよう、目指す成果、達成期限などが明確な施策

 また、評価体制についても、2006年8月の発足以降、IT新改革戦略に関する取り組み状況の評価を行なってきた「IT 新改革戦略評価専門調査会」が継続して重点計画-2007に関する取り組みを評価するとみられています。同調査会のこれまでの提言は既に今回の重点計画-2007にも反映されており、このようなPDCAサイクルを継続的に回すことでより効率的、効果的な施策の実施が期待できるでしょう。