図1 クリエイティブ・コモンズでは4種類のマークで利用条件を明示する
図1 クリエイティブ・コモンズでは4種類のマークで利用条件を明示する
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図2 条件をわかりやすく明示することでコンテンツの普及促進が期待できる
図2 条件をわかりやすく明示することでコンテンツの普及促進が期待できる
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 クリエイティブ・コモンズとは,作品を利用する際の条件をわかりやすい形で表現しようというプロジェクトである。何かと複雑になりがちな著作権について,代表的な四つの条件をマークで表すというもの。自分の作品を利用する人に対して,利用の際の条件を簡単かつ間違いなく把握してもらうのが目的である。

 インターネットの普及や技術の進歩で,作品を広く公開する人や機会は大幅に増えている。例えば,自分でホームページやブログを開設したり,動画を作って公開したりすることが簡単にできるようになっている。そんなとき,ほかの人が公開している作品を使いたくなることがある。他人の作品をホームページの壁紙や動画のBGMとして取り込めば,自分のコンテンツをより魅力的にできると考えた場合などだ。だが,使いたい魅力的な素材を見つけても,すぐに利用するわけにはいかない。他人が作った作品は,その作者に著作権などの知的財産権があるからである。きちんと確認せずにうっかり使ってしまうと,作者から権利の侵害を追及される危険性がある。

 その一方,自分の作品を利用してもらいたいと考えている作者もたくさんいる。例えば,「作品を広めて有名になりたい」という人もいれば,単純に「より多くの人に見て欲しい」という人もいるだろう。そんな人にとっても,利用者に尻込みされる状況は望ましいといえない。

 クリエイティブ・コモンズは,このような「作品を使いたい人」と「作品を広めたい作者」との仲介をしようというプロジェクトである。2001年に米スタンフォード大学のローレンス・レッシグ教授などが立ち上げた。

 具体的には,クリエイティブ・コモンズでは「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス」というしくみを提唱している。これは,作者が自分の作品を公開する際に利用条件のマークを付けるものである。マークというわかりやすい形で明示することで,著作権などに関する知識がなくても,利用者は安心して誤解なく作品を利用できることを目指している。

 例えば,「自分の描いたキャラクタを皆に使ってもらいたい」と考えている絵師がいたとする(図1)。そんなときはマークを付けることで,わざわざ作者の絵師の許諾を得なくても,誰でも簡単に利用できることを明示したところ,そのキャラクタがさまざまな商品に利用されるようになるといった具合といえる(図2)。

 利用条件を表すマークは,図1のセリフの中で示した四つ。左から「表示」,「非営利」,「改変禁止」,「継承」を表す。「表示」は「作品にクレジットを表示しなくてはならない」という意味である。このマークの付いた作品を利用する際には,題名,製作日,著作権者/原作者/提供者名といった作者が求めるクレジットを表記する必要がある。「非営利」は,「作者の許諾なしに作品を営利目的で利用してはならない」という意味である。このマークの作品は,非営利の目的のためなら利用してよいということを示す。「改変禁止」は「作品を改変してはならない」という意味である。逆に,このアイコンが付いていない作品は,改変して自分の作品で使うことができるということになる。最後の「継承」は,「コンテンツを改変した場合には利用条件を継承すること」という意味である。例えば,「非営利」のマークが付いていた作品を含んだ新しいコンテンツには,公開する際に「非営利」のマークを付ける必要がある。

 マークの利用にあたって,事前の認証などの作業は必要なく,作者が自分の条件に合ったマークを選んで作品と一緒に提示すればよい。なお,クリエイティブ・コモンズのWebサイトでは,自分の希望する条件を入力すると適切なマークの組み合わせを教えてくれるサービスを公開している。このサービスでは,マークを公開するためにWebサイトに貼り付けるHTMLも合わせて表示する。また,クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの条件をメタデータとしてWebサイトなどに埋め込んでおけば,インターネットから作品の検索がしやすくなるといった効果が見込める。マークはコンテンツを公開しているWebサイトなどに表示する。付ける場所には指定はない,Webサイトの中にある,どの要素をライセンスしているのかはっきりわかるようにする必要がある。