図1 見た目や機能面で寂しいコンテンツが…(イラスト:なかがわ みさこ)
図1 見た目や機能面で寂しいコンテンツが…(イラスト:なかがわ みさこ)
[画像のクリックで拡大表示]
図2 外部の力を借りてくることで華やかになる(イラスト:なかがわ みさこ)
図2 外部の力を借りてくることで華やかになる(イラスト:なかがわ みさこ)
[画像のクリックで拡大表示]

 Web APIとは,Webサイトなどの開発を効率的に行うための技術である。まず,Web APIについて知る前に,「APIとは何か」を復習しておこう。APIは「application programming interface」の略で,アプリケーションの開発者が,他のハードウエアやソフトウエアの提供している機能を利用するための手法である。例えばWindowsなどのOSは,アプリケーション向けに,ウインドウの描画などのよく使う機能をAPIとして提供している。

 APIを使えば,プログラムを開発する際の手間を省ける。開発者はOSなどの提供者が定めた手続きに従って,必要な機能のAPIを呼び出すようプログラミングすればよい。すると,自分で「ウインドウを描画する」などのコードを書かなくても,その機能を利用したプログラムを作成できる。

 Web APIは,Webサイトなどの開発のために,インターネット経由で利用できるAPIである。開発者にとっては,Webサイトなどの高機能なコンテンツを,より短期間・低コストで開発できるという利点がある。

 例えば多くのサイト運営者は,自分のサイトの機能や見栄えを良くしたいと考えるであろう。しかし,個人や小さな企業では,開発できる機能に限界がある。Web APIを利用すれば,「開発者が自分一人では作れないデータベースや機能を利用した開発が可能となる」(ヤフー担当者)。大規模な検索エンジン,地図のデータベース,言語の解析など,片手間では開発できない機能をWeb APIを通じて取り入れられるわけだ。

 例えば高校野球で,1回戦のときに客席が閑散としていたような小さな学校でも(図1),決勝が近くなるとブラスバンドやチアリーディングの得意な他校に手を貸してもらって応援を盛り上げることがあるのと似ている(図2)。

 Web API以前にも,ネットワーク越しに他のソフトウエアの機能を使う方法は存在していた。ただし,こうした技術は独自のプロトコルを使っていたため,Webアクセスで使うHTTPの通信しか許可しないファイアウオールを超えられず,インターネット経由で利用するのが難しかった。

 Web APIでは,APIを公開する側と利用する側で命令やデータをやりとりする技術として,「SOAP」や「REST」と呼ばれる技術を使う。これらは,HTTPなどのプロトコルを使って,XML形式のデータをやりとりするためのしくみである。こうしたインターネットの標準的な技術を使うため,開発や利用に特定の環境を要求しないという柔軟性がWeb APIの特徴の一つだ。

 では,実際にWeb APIにはどんなものがあるのか,もう少し具体的に見てみよう。

 Web APIが提供する機能として数多いのが,企業の持つデータベースを公開するというものである。例えば米Googleの「Google Maps API」では,同社の地図データベース「Google Maps」の情報を別のWebサイトに取り込んで表示したり,地図上に目印を付けたりすることが可能だ。米Amazonの「Amazon E-Commerce Service」ように,商品データを参照できるデータベースもある。

 データベースだけでなく,プログラムの機能を提供するタイプのWeb APIも提供されている。例えばヤフーの「日本語形態素解析Webサービス」では,日本語の文章を区切ったり,読み仮名を付けたりできる。

 Web APIの公開は2002年ごろ,GoogleやAmazonなどの先進的なインターネット関連企業によって始まった。今では多くの企業や個人がWeb APIを公開しており,しかもその大半は無償で使うことが可能である。

 なぜ企業は無償でWeb APIを公開するのであろうか。一つは,「Web APIを公開することで,より優れたサービスが生まれる可能性が高いためである。Googleの技術を使ってGoogle以外の人たちが考えてくれることで,Googleだけでは思いつかなかったようなユニークなサービスが出てくる可能性がある」(Google担当者)という狙いがあるようだ。

 Web APIを利用してもらうことで,間接的にせよ自社のサービスのユーザーが増えることも期待できる。複数の企業や個人が公開しているWeb APIを組み合わせる開発手法を「マッシュアップ」と呼ぶ。Web APIを公開する企業が増えれば,マッシュアップによってこれまでなかった便利なサービスが次々と登場してくると期待できる。