Fake RAID(またはBIOS RAID)は,ハードウエアを利用したソフトウエアRAIDです。ハードウエアRAIDのように高価なインタフェース・チップを搭載していない機器においても,ハード・ディスクを冗長化構成にして可用性を高めたり,複数のハード・ディスクを用いてアクセス速度を高速化したりするRAID機能を安価に実現できます。

 ソフトウエアRAIDは,RAID機能をソフトウエアのみで実現したものです。Fake RAIDは,RAID機能自体はソフトウエアにより実現していますが,RAIDを構成するハード・ディスクの管理や操作はハードウエア内のファームウエア(BIOS)側で行っています。そのため,ソフトウエアRAIDはソフトウエアが起動しないとRAID機能を使えませんが,Fake RAIDでは(1)BIOSが起動した時点からRAID機能が使える,(2)BIOS側の設定だけでRAIDが使えてしまう,という2つの利点があります。

 Fake RAIDを実現するためには,専用のインタフェース・チップと専用のデバイス・ドライバが必要です。最近のデスクトップPC用のマザーボードには,RAIDサポートというものがあります。これらのほとんどが,Fake RAID用のインタフェース・チップを搭載しています。

 専用のデバイス・ドライバについては,WindowsやLinux OSならさまざまなインタフェース・チップに対応したドライバが用意されています。Linux OSの場合,カーネル2.6に含まれるdmraidドライバが表1に示す多くのインタフェース・チップに対応しています(2007年8月下旬時点)。

表1 dmraidドライバに対応する製品
インタフェース・チップ搭載製品 対応RAIDレベル
米Highpoint Technologies社のHPT37Xチップセット搭載製品 Spanning,RAID0,RAID1,RAID10,RAID01
米Highpoint Technologies社のHPT45Xチップセット搭載製品 Spanning,RAID0,RAID1,RAID10
米Intel社のRAID対応ICH(I/O Control Hub)を採用したマザーボード RAID0,RAID1
米LSI Logic社のMegaRAIDシリーズ RAID0,RAID1,RAID10
RAID機能付きの米NVIDIA社製チップセット搭載マザーボード Spanning,RAID0,RAID1,RAID10
米Promise Technology社のFastTrackシリーズ Spanning,RAID0,RAID1,RAID10
米Silicon Image社のMedleyコントローラ搭載製品 RAID0,RAID1,RAID10
台湾VIA Technologies社製RAIDコントローラ搭載製品 Spanning,RAID0,RAID1,RAID10