図1 自分用のブックマークをどこにいても使える(イラスト:なかがわ みさこ)
図1 自分用のブックマークをどこにいても使える(イラスト:なかがわ みさこ)
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図2 登録ユーザー以外も情報集めなどに活用できる(イラスト:なかがわ みさこ)
図2 登録ユーザー以外も情報集めなどに活用できる(イラスト:なかがわ みさこ)
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 2006年ころから「ソーシャル・ブックマーク・サービス」(以下,SBSと表記)という言葉を目にする機会が増えてきた。ひと言で表すと,「従来Webブラウザ単位で管理していた『お気に入り』(ブックマーク)を,インターネット上にあるサーバーで管理するサービス」と表現できる。

 SBSは,2003年末に米国のジョシュア・シャクタ氏が趣味で立ち上げた「del.icio.us」というサービスが発祥だ。国内では,はてなが2005年2月に提供を始めた「はてなブックマーク」が初となる。現在では30以上のサービスが存在している。

 SBSは,ソーシャル(social:社交的)と名が付くように,サーバーにある情報をみんなで共有することにより,単に個人のブックマークをネット上で管理できるという枠を超えた,まったく新しい使い方・付加価値が加わっているという点に特徴がある。

 実際に,SBSを使うことによるメリットは大きく二つある。一つは,登録ユーザー本人が得られるメリット。もう一つは,登録ユーザーだけでなく,あらゆるインターネット・ユーザーが得られるメリットだ。順に見ていこう。

 まずは登録したユーザー本人のメリットから。こちらは単純明快で,「場所を問わずにいつでも自分のブックマークにアクセスできる」という点がメリットになる。

 通常,ブックマークはユーザーがWebブラウザごとに管理する必要がある。自宅と会社,モバイルなどパソコンが代わるたびに個別に登録や削除をしなければならない。SBSを使うことで,お気に入りのWebページをSBSに登録しておけば,いつどこにいても共通のブックマークとしてアクセスできるようになる(図1)。

 ただし,例えば自宅のパソコンでしかお気に入りを使わないというような人は,個人のブックマークをネット上で管理できるといっても,特にメリットを感じないかもしれない。でも,実はそんな人にもSBSを使うメリットがある。それは,「サービスに集まった大量のブックマーク情報をさまざまな切り口で分析できる手段を提供することにより,利用者が自分の好きなように情報集めやトレンドの把握などに活用できる」(はてなの山田 聖裕氏)ことだ。

 このようにユーザーが自分の好みに合わせてWeb上にある情報を収集したり分類することを専門用語で「フォークソノミー」(folksonomy:人々を表すfolksと分類を表すtaxonomyを掛け合わせた造語)と呼ぶ。これが,二つめのあらゆるインターネット・ユーザーがSBSを使うことで得られるメリットだ。

 SBSを使ったフォークソノミーの典型例を三つほど紹介しよう(図2)。

 一つは,ニュースや特定のトピックの盛り上がり具合を確認できること。SBSでは,同じWebページをブックマークしているユーザー数を表示できる。このため,あるページを多くのユーザーがブックマークしていれば,そのページ(で書かれていること)が話題になっているとすぐにわかる。

 二つめは,ユーザーの好みやトレンドといった傾向を把握できること。一般に,SBSではブックマークを登録する際に検索用の“タグ”を付けられるようになっている。このしくみを利用して,あるページを登録したユーザーがどんな関心を持っているかなどを調べることができる。サービスによっては,多くのユーザーが付けているタグほど大きく表示する「タグクラウド」というしくみを採用していて,ひと目で傾向が分かるようになっている。

 三つめは,ターゲットを絞り込んだ効率的な情報発信や共有にある。特定分野の先端的ユーザーが作っているブックマークを,その分野に興味があるほかのユーザーがチェックすることで,効率的に情報を伝えたり共有できたりするわけだ。

 googleなどの検索エンジンを使えば何でも調べられますが,好みの情報だけを適切に集めるにはかなりの労力が必要となる。SBSは,苦労して情報を探さなくても自分の代わりに誰かが集約してくれた情報を入手できるという,「楽して情報を集められる」サービスといえる。