図 Adobe AIRを使ってFlashで開発されたサンプル・アプリケーションの一つ「Maptacular」の画面
図 Adobe AIRを使ってFlashで開発されたサンプル・アプリケーションの一つ「Maptacular」の画面
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 Adobe AIR(Adobe Integrated Runtime)とは米アドビ システムズが開発中のアプリケーション実行環境である。2007年6月にWindowsおよびMac OS X向けのベータ版が公開された。以前はApolloという開発コード名で呼ばれていた。正式版は2007年後半にリリースする見通し。Linuxにも対応する予定で,将来的には携帯電話やPDAもサポートする計画である。

 インターネット用のクライアント・ソフトといえば,Internet ExplorerやFirefoxなどのWebブラウザが代表格だ。これらのWebブラウザは,HTMLファイルを表示するだけでなく,Flashなどのマルチメディア・コンテンツの再生やJavaScriptを活用した対話型アプリケーションまで,さまざまな用途で使われている。ただし,こうしたコンテンツはWebブラウザ上で動く以上は,必然的にWebブラウザの枠にはまった機能しか実現できない。そのため,「ユーザー・インタフェースを凝ったものにしたい」,「オンラインでもオフラインでも動作させるものにしたい」などといったアプリケーション開発者のニーズに十分に応えられなかった。

 Adobe AIRを使えば,Webアクセスに代表されるインターネットの使い方と密に連携しながらも,Webブラウザの枠にとらわれないアプリケーションを開発できるようになる。

 さらに,Adobe AIR向けのアプリケーションは,複数のプラットフォームで同じように動く。開発者は,動作するWebブラウザによって表示が異なるといった問題に頭を悩ます必要はない。

 ユーザーは,パソコンにAdobe AIR実行環境をインストールして,その上で複数のAdobe AIRアプリケーションを動かす格好になる。Adobe AIR実行環境には,Macintosh向けWebブラウザの「Safari」でも採用されたHTML/JavaScriptのエンジン「WebKit」のほか,FlashやAjaxを使ったコンテンツを表示する機能を装備する。

 ユーザーにとってのAdobe AIRのメリットは二つある。一つは,より洗練されたデザインのアプリケーションが期待できる点。もう一つは,従来のWebアプリケーションより良い使い勝手が望める点だ。

 例えば,パソコン上のデータとインターネット上のWebアプリケーションを連携させるといったサンプル・アプリケーションが公開されている。名刺のデータをGoogleマップの上にドラッグ・アンド・ドロップすると,名刺の住所の地図を表示するというものだ(図)。アドビ システムズでは,企業向けのグループウエアなどでの活用にも期待しているという。

 ベータ版のAdobe AIR実行環境とサンプル・アプリケーション,開発キットなどはアドビ システムズがソフトウエアの試験版などを公開するWebサイト「Adobe Labs」(http://labs.adobe.com/)からダウンロードできる。