財務情報や定性情報を組み合わせた企業情報データベースを駆使しながら倒産リスクを推定し与信判断を行うこと。与信に要する時間の短縮や、正確さ向上を図る。

 中小企業にとって、金融機関から融資を受けられるかどうかは、時として企業の存続を左右する問題です。しかし、金融機関にとっては、中小企業の与信は極めて難しい課題です。従来はベテランの与信担当者が磨き抜かれた観察眼を発揮して行うべきものというのが常識でした。

 しかし、中小企業の与信判断をIT(情報技術)を駆使して行う「スコアリング融資」を実用化することでより迅速かつ正確な融資を実現しようという動きが徐々に金融業界で進んでいます。

◆効果 基準をモデル化

 スコアリング融資が金融業界で話題に上り始めたのはいわゆる「貸し渋り」「貸し剥がし」が話題になった1990年代後半からです。しかし当時は、単なる理想論として語られているだけで、どの程度実用になるかははっきりしていませんでした。

 中小企業の倒産リスクをデータベース分析するのが難しい背景として主に以下の理由が挙げられます。(1)中小企業の財務力は、事業主の親族の資金提供力に依存するなど上場企業に比べて不透明な要素が多い、(2)法人の帳簿データばかりでなく、事業主のクレジットカードや消費者金融の利用履歴など個人的な状況も加味して信用度を判断する必要がある、(3)経営環境が大企業に比べて不安定なため過去の売り上げ推移などを与信判断においてあてにしづらい、(4)多くの金融機関は倒産企業の事例情報を分析目的で十分に収集していない─の4つです。

 そこでスコアリング融資を実用化するには、倒産企業の事前の財務情報を収集しつつ、融資先に申告してもらうべき情報内容にはどのようなものがあるかを検討する必要があります。例えば消費者金融の利用状況などです。そのうえで、どのような情報項目と倒産との相関性が高いのかを検証して、判断基準をモデル化します。

◆事例 6年がかりで確立

 都内を中心に78店舗を持つ中堅地銀、東京都民銀行は、スコアリング融資の開発に98年から取り組みました。中小企業に数百万円の融資を行う「スモールビジネスローン」に活用を検討。しかし、98年当時はまだ人手の判断によって融資を決める比重が高かったようです。スコアリング結果がベテランの融資担当者から見ても違和感ない精度になったと同行が自信を持ったのは2004年秋のこと。検証用の倒産事例を十分蓄積するのに苦心していたようです。

 現在、1期分の決算書を含む延べ200項目の情報を事業主に申告してもらい、融資可能かどうかを申し込みの翌日に回答しています。スモールビジネスローンの98年以来の融資実行件数は2006年12月末で2万7000社に達しています。