消費者の心理に基づく属性。価値観やライフスタイル、し好といった人間心理にかかわる顧客情報を指す。近年、マーケティング分析の切り口として注目を集めている。

 企業が消費者行動の情報を収集する手段として、代表的なものの1つは小売店などが発行するポイントカードでしょう。カードを通じて収集できる情報には、住所や年齢、性別といったデモグラフィック(人口統計的特性)情報に加えて購入商品や買い物の頻度といったものがあります。

 ただし「誰がいつどこで何を買ったか」が分かったからといって、購入の動機など心理的な要因はなかなか分かりません。企業が効果的なプロモーションを行うに当たって本当に知りたいのは消費者の価値観やライフスタイルです。

 そこで、消費行動の心理的な背景を解き明かすために消費者を分析する切り口が、「サイコグラフィック(心理的特性)」と呼ばれるものです。価値観やライフスタイル、し好といった心理面での特性を指します。サイコグラフィックに踏み込んで分析すれば、商品が好かれた理由や興味を持たれなかった理由がより深く分かります。

◆効果 流行の裏にある価値観を探る

 サイコグラフィックがここ数年、注目を集めている理由の1つが、企業側に理解しづらい消費行動が増えていることです。男性をターゲットにした大型バイクに女性が乗ることが増えたり、男性が化粧品を購入したり、高級外車の所有者が100円ショップでも買い物をするといった事象です。価値観の多様化により、購入履歴だけを追う従来型のマーケティング分析では成果を出しづらくなっているのです。

 「LOHAS」や「ちょい不良(わる)オヤジ」といったキーワードもサイコグラフィックに基づいています。両者とも外面的に分類できる消費者層ではなく、内面的な価値観を表す切り口です。

 こうした価値観やし好は、従来のデモグラフィック情報や購買履歴だけではなかなか浮かび上がってきません。アンケートやインタビューで定性情報を積極的に収集することも必要です。

 ただし、大手クレジットカード会社や電子商取引サイト運営者の間では、網羅的な購買情報やウェブ閲覧履歴といった行動情報を豊富に得られる強みを生かして、それらに基づいてサイコグラフィック分析を行う試みも徐々に進んでいます。

◆事例 クレジットカード利用が5%増

 JCBが2005年10月から全国で配布しているダイレクト・メール『JCBニュース ユニ・クリップ』はサイコグラフィック分析で成果を上げています。掲載する情報や表現を会員のし好に合わせて変えたところ、クレジットカードの利用額が5%増え、退会率が20%下がりました。同社は約5900万人(2006年9月時点)の会員を8つの価値観と9つのライフスタイルで分類しています。

【参照】日経情報ストラテジー 2006年3月号「業務革新ビフォー・アフター 顧客をつかむ!・JCB」