図 SkeedCastはP2Pを階層化したコンテンツ配信ネットワーク
図 SkeedCastはP2Pを階層化したコンテンツ配信ネットワーク
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 SkeedCastとは,インターネットイニシアティブ(IIJ)が2007年4月に開始した動画ファイルやソフトウエアの配信を想定したコンテンツ配信サービスである。P2P(peer to peer)技術を採用し,P2Pの強みを生かしたシステムの拡張性や耐障害性を確保しているコンテンツ配信ネットワークである。

 SkeedCastのネットワークは,1.コンテンツ投入,2.コンテンツ中継,3.コンテンツ受信──の3階層が明確に分かれている(図)。「エントリ・ノード」から投入したコンテンツを「共有ノード」が中継し,ユーザーのパソコンがコンテンツを受け取る。

 このうち,P2P本来の動きをするのはコンテンツ中継の部分。「共有ノード」が自律的にネットワークを組み,コンテンツをコピーしながらネットワーク内に拡散させていく。一方,個人ユーザーのパソコンはコンテンツを受信するだけ。専用ソフトをインストールしておく必要はあるが,P2Pを利用していることはわからない。

 一般に使われているP2Pアプリケーションは,個人ユーザーのパソコン同士がネットワークでつながって,ファイルのやりとりや通話を実現している。ユーザーのパソコンに役割を担わせることで,管理者が中継用のサーバーを用意せずに済むのが大きなメリットだ。

 ただしSkeedCastでは,中継用のサーバーはIIJが用意する。その代わりSkeedCastは,P2Pの拡張性と耐障害性というメリットを生かしている。SkeedCastの共有ノードは簡単に追加できる。ソフトをインストールし,SkeedCast全体を管理するコントロール・ノードに登録するだけだ。後は共有ノード同士が自動的につながり,コンテンツの中継を始めるので,余計な手間はかからない。

 SkeedCastのコンテンツ配信能力は,コンテンツを中継する共有ノードの能力の総和で決まる。配信するコンテンツの数やサイズ,ユーザー数に応じて共有ノードを追加することで,自由自在に能力を拡張できるわけだ。また,万一共有ノードのどれかが障害になっても,利用者に影響は及ばない。各コンテンツは,細かく分割されたうえでコピーされ,複数のノードに置かれるので,全体で見れば失われることはない。共有ノードは自動的にネットワークを再構成して運用を継続する。ユーザーのパソコンも複数の共有ノードにアクセスするようになっているので,サービスは止まらない。例えば,深夜に遠隔地で障害が起こっても,あわてて対処しなくて済む。