経営破たんした企業、あるいは経営破たんしかけている企業を再生するために登用された経営者。財務、組織、事業とあらゆる観点から企業を改革する責任を担う。

 2003年4月に産業再生機構が設立されたころから、新たな職業として注目度が高まっているのが「ターンアラウンド・マネジャー」です。経営破たんした、もしくは経営破たんしかけている企業の経営者となり、社員の志気を維持・高揚させ、新たな成長戦略を立案し軌道に乗せる、いわば“再生請負人”です。

 米国には、いくつもの企業をわたり歩いたターンアラウンド・マネジャーがおり、日本でも今後は徐々に増加する兆しが出ています。

◆効果 財務にとどまらない

 ターンアラウンド・マネジャーの人材像は、財務に強いことはもちろん、従来のしがらみに囚われずに新戦略を描いて軌道に乗せるプロの経営者そのものです。これに対して、1990年代まで日本で活躍した旧来の再生請負人の多くは銀行などの金融機関出身者で、債権放棄の働きかけや資産売却など財務的な処置に腕をふるうにとどまるケースが大半でした。

 しかし、90年代以降の経営環境では、財務的な処置だけでは企業が再生しきれないケースが多くなっています。経済成長率が低い状況に対応し、新たな成長戦略や組織体制まで作り直さないと成長力を取り戻せないからです。マネジャー層の全面的な入れ替えや評価制度の刷新といった組織改革はもちろん、時には取引先の絞り込みと取引条件の見直しなどより大胆な施策の実行リーダーが求められます。

 ターンアラウンド・マネジャーが直面する課題の代表的なものはプロパー社員からの信頼獲得です。「この会社にいても自分の将来像が描けない」「あの人はうちの事業を分かってない」という不安や不信感を晴らせるだけのコミュニケーション力や、早期から成果を出していける改革実行力が求められます。

◆事例 社員を元気にする

 ハンバーガーチェーン大手のロッテリア(東京・渋谷)、靴卸大手のトークツ・グループ(東京・中央)、帽子卸トップのアルプス・カワムラ(東京・中央)の3社は2006年から、ターンアラウンド・マネジャーを社長として招き企業再生に取り組んでいます。

 これら3社の新社長を選び送り込んだのは企業再生支援会社のリヴァンプ(東京・港)。リヴァンプはファーストリテイリング幹部だった澤田貴司氏と玉塚元一氏が設立し、「社員を元気にすることで会社を芯から元気にする」という理念を掲げています。リヴァンプには2006年5月にデル日本法人の元社長である浜田宏氏も共同経営者として参画。新社長を支援する体制を強化しました。リヴァンプのようなスタイルの企業再生が実績を重ねていけば、日本でもターンアラウンド・マネジャーの発掘・育成に弾みがつきそうです。