欧州において2009年から国際会計基準導入に準じた連結財務諸表の開示が義務付けられること。これに準ずるため日本の会計基準の改定が進んでいる。

 日米欧の会計基準をすり合わせようというなかで、「企業会計の2009年問題」が日本の会計士の間で話題になっています。

 これは欧州連合(EU)の会計基準見直しに端を発します。EUは2005年1月から域内の上場企業に対してIASB(国際会計基準審議会)が策定した国際会計基準に準拠するよう義務付けました。さらに、海外企業が域内で資金調達を行う場合にも同様に2007年から国際基準を義務付けることを決定しました。その後2006年4月、EUの判断で義務付けは2009年からと2年間先送りされました。それでも、日本の会計基準が国際基準への準拠を迫られていることに変わりはありません。金融庁と連携して日本の会計基準を作っている民間団体、企業会計基準委員会が日本の会計基準の見直しを続けています

効果◆ 26項目を見直し

 2005年当時、EUは国際会計基準と日本の会計基準を調べて、26項目の「重要な差異」を指摘しました。

 主なものを挙げていくと、M&A(企業の合併・買収)の会計処理方法、ストックオプション費用の計上、棚卸資産の評価方法、減損会計の適用基準、研究開発費の資産計上などです。

 これらの中には、既に国際基準に準じて見直された項目もあります。例えば、企業結合時の会計処理方法に原則として時価会計を導入すること、ストックオプション費用を新株予約権として計上することなどが既に制度化されました。

 2006年7月には、棚卸資産の評価基準が見直されました。従来は取得価格をベースとして評価する原価法と、時価の下落を反映する低価法が併存しており、主流だったのは原価法でした。2008年4月からは国際基準に準じて低価法に一本化されます。

 こうした変更は会計システムにも影響を及ぼします。「会計パッケージをベースにしない独自開発の会計システムの場合、思わぬ改修コストがかかる可能性もある。それなのに情報システム担当者で会計基準の見直しの話題を気にかけている人がとても少ない」(公認会計士の岩谷誠治氏)と会計制度の動向により注意を払うよう警告する専門家もいます。

事例◆ 前倒しで新基準に準拠する企業も

 既にこうした改定を先取りする企業も出ています。三菱マテリアルは2006年9月の中間決算でいち早く棚卸資産の評価方法を原価法から低価法に切り替えました。半期で20億円以上の減益要因になりましたが、業績好調なうちにシビアな評価基準に準拠しておこうという狙いです。