親からの相続なしに1代で若くして財を成した富裕層を指す。ポピュリッチやミリオネーゼといった呼び方もある。従来の富裕層とは価値観が異なるといわれる。

 マーケティング専門家の間で、高額商品の売れ方が従来とは違ってきた、という見方が強まっています。高額なスポーツカーやブランド衣料が30~40代と比較的若い消費者に売れるケースが増えており、そうした購入者は、従来のお金持ちとは異なる価値観を持っているのではないか、というのです。そこで彼らを「新富裕層」と呼び、消費行動を分析する取り組みが盛んになっています。新富裕層を、「ポピュリッチ」と名づけたり、女性の場合「ミリオネーゼ」と呼んでいる例もあります。

◆効果 性格にも違い

 新富裕層は、親から家業や資産を受け継いだわけではなく、ここ数年で突然に財を築いた人々です。背景として指摘されるのが、新興株式市場の活性化です。ジャスダックやマザーズでは、創業から平均10年前後のベンチャー企業が上場し、平均40代の社長が上場益を得ています。

 また、2000年ごろから手数料の安いオンラインの株式取引が普及したことで、短期間で億単位の資産を手にした投資家も増加しました。

 新富裕層を「ポピュリッチ」と名づけた日経産業消費研究所の山岡拓主任研究委員によると、新富裕層の中心プロフィールは「30~40代中心の投資家やベンチャー経営者」、従来型の富裕層は「50代以上のメーカー経営者」です。従来の富裕層は親から受け継いだ事業を守って子孫に残そうという考え方が強く、堅実な性格でした。新富裕層はリスクを取ることに積極的で子孫に財を残す発想は希薄です。

 日経産業消費研究所とイー・マーケティング(東京・港)が共同で資産家の消費行動について2005年12月に調査したところ、新富裕層は「500万円以上のスポーツカー」や「欧州のブランドスーツ・ドレス」といった、ゴージャスで誰が見ても価値が分かる物に消費したがる傾向が強いという結果が出ました。「新富裕層は人脈作りのためにホームパーティーを開く意欲も強い。同世代に見せる効果を重視して高額商品を購入するのではないか」と山岡氏は分析しています。その一方で、「500万円以上の絵画」や「日本・中国・朝鮮の高級古陶磁器」といった伝統的な物への消費には消極的です。

◆事例 200万円の布団が30~40代に売れる

 新富裕層の台頭を実感している企業の1社が寝具卸大手の西川産業(東京・中央)です。同社によれば、231万円する、アイスランディックアイダーダウンという貴重な素材を利用したかけ布団の購入層は以前は60代以上がほとんでした。ここ数年は、30~40代に広がってきており、こうした傾向は、100万円以上の商品で目立つとしています。