家庭用品全般を対象に、事故あるいは事故に結びつく欠陥情報を経済産業省が収集する制度。来年からはメーカーなどに報告が義務づけられる見込み。

 昨年から今年にかけて、松下電器産業の石油ファンヒーター、パロマ工業のガス給湯器やシュレッダーによる死傷事故が明るみに出て、自主回収に至るケースが続発しています。こうした背景から、「事故情報収集制度」が来年にも大幅に強化される見通しです。

 同制度は1974年に消費生活用製品安全法で制定されましたが、発足時点ではメーカーなどに報告の義務付けはありませんでした。消費者からの通報が主な情報源となっていました。事故報告義務を規定した法律は自動車などごく一部の対象に限られていたのです。

 今回の改正案で、生活用品全般を対象に、メーカーや輸入業者に事故報告が義務付けられることになります。報告の義務化を盛り込んだ改正案を経済産業省は臨時国会に提出済みで、早ければ2007年春にも施行されます。

◆効果 10日以内に報告しないと懲罰対象に

 メーカーや輸入業者が重大な事故情報を把握した後、10日以内に行政へ報告する義務があります。原因が製品欠陥かどうかの自主判断にかかわらず直ちに報告する必要があります。報告事項は、機種や販売数および事故発生日などです。報告を怠ると体制整備命令が出され、違反者には懲役1年以下または100万円の罰金が課されます。「重大な事故」とは、死亡、負傷、中毒や火災発生などを指します。

 産業構造審議会消費経済部会がまとめた中間案によると、事故情報が報告されると、経産省は情報をこう活用します。(1)まず報告受付後、ホームページ上で1週間以内に製品の一般名称や事故の概要を発表、(2)独立行政法人の製品評価技術基盤機構が製品欠陥の有無を調査、(3)製品欠陥に基づく事故であり、被害拡大の恐れがあると判断されると社名や製品名、事故原因を公表する。被害状況によっては製品回収の行政命令を出すこともありえます。

◆事例 クレームを分析

 今回の法改正により、原因が製品欠陥かどうかを特定して製品名を公表する判断の主導権を行政側が握る格好となります。製品名公表に至れば、影響は計り知れません。

 それだけに、小さなクレーム情報にも神経をとがらせる体制作りがメーカーや輸入業者にはますます重要です。

 事故につながり得る情報の収集管理体制作りで先行しているのが松下電工です。2005年に、お客様相談室や修理相談室へ届く顧客の声を電子化し、テキストマイニングによって、事故につながり得る情報をいち早く発見できるシステム「VOC21」を構築しました。重要な情報が見つかると直ちに経営層や製品部門の担当者へメールで通知することになっています。