その時点で顧客が何を求めているかを把握して、最も効果的な情報を送るマーケティング手法。顧客が商品やサービスを必要としている時に情報を送るため、一般のマーケティングよりも効果が高い。「リアルタイム・マーケティング」は米国のコンサルタントであるレジス・マッケンナ氏が提唱する概念。

 家に帰宅してみると、郵便受けにダイレクトメールが入っていました。差出人は近所にあるレストランで、内容は「このハガキを店員に見せれば料金を半額にします」というもの。多少関心はあったのですが、疲れていたのでハガキを机の引き出しにしまいシャワーを浴びることに。その後、しばらくはハガキのことを覚えていたのですが、一週間も経つと存在を忘れてしまいました。

 数日後、昼の12時ごろに複数のレストランが入居したビルを歩いていると、「本日は料理がすべて半額です」との声が。何でもそのレストランの10周年キャンペーンを実施しているので、通常よりも低料金で料理を注文できるそうです。ちょうど空腹だったので、その店に入ることにしました。

◆効果
最適な時を狙い撃ち

 以上のように、内容が同じでもその情報をいつ相手に伝えるかによって、効果は大きく変わってきます。最適な時期に必要とされる情報を送ることで効果的なマーケティングを実現しようとする考え方がリアルタイム・マーケティングです。

 リアルタイム・マーケティングは米国のコンサルタントであるレジス・マッケンナ氏が90年代半ばに提唱した概念です。マッケンナ氏はリアルタイム・マーケティングを、「双方向のやり取りによって顧客が何を求めているかを把握し、それをもとに最適なサービスを常に提供すること」と定義しています。この考えのうち、顧客が求める情報を提供しようとする取り組みはCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)として企業に定着していますが、それをリアルタイムで実施しているところはほとんどありませんでした。

◆事例
複数の企業が取り組みを開始

 しかし最近になって、リアルタイム・マーケティングに乗り出す企業が出始めました。例えば、東京都港区にある複合娯楽施設「メディアージュ」を運営するソニーアーバンエンタテインメント(本社東京)は、2001年7月から現在時刻や入場してからの時間をもとに来場者が何を求めているかを判断し、最適な情報を電子メールで携帯電話に配信するサービスを試験的に開始しました。入場して数分間経過した入場者には施設の案内情報、夕方には入居しているレストランの情報など、来場者が必要な情報をタイムリーに伝えて、購買意欲を引き出しています。この例のように、リアルタイム・マーケティングを実現する企業は携帯電話のメール受信機能を活用するのが一般的です。

 リアルタイム・マーケティングの概念が確立された当時は、こうした端末が存在しなかったため、具体的な取り組みを始めることが困難でした。しかし、携帯電話の普及がこの問題を解決しています。

長谷川 博 hhasegaw@nikkeibp.co.jp