社内にある大量のパソコンやサーバー、プリンター、ネットワーク機器、ソフトウエアといった「IT資産」を管理すること。IT資産管理を怠ると、トラブル対応が遅れたり、機器やソフトの更新処理が素早くできない。IT資産が多くなると、その管理コストは膨れ上がるが、「IT資産管理ツール」を使えば、人手に頼りがちな管理業務を効率化できる。

 いまや社内に、数百台、数千台規模のパソコンやサーバーが導入されているのは珍しくありません。しかし、それだけ多くのIT資産を、いったい誰が、どうやって管理していけばよいのでしょうか。

 一口にパソコンやサーバーの管理といっても、その管理項目は非常にたくさんあります。導入した時期や台数、納入業者との契約形態に始まり、機器に搭載されたCPU(中央演算処理装置)の種類やメモリー容量、ハードディスク容量、インストールしたソフトなどを、1台ごとに把握しておかなければなりません。

 多くの企業では、情報システム部門が分厚い台帳を作って、こうしたIT資産を管理しています。ほとんどの企業では、この台帳作成を人海戦術でこなしているのが実情で、多くの人件費がかかっています。そのため、こうしたIT資産管理を効率化しようとする動きが広がってきました。

◆効果
コスト削減やライセンス管理に威力

 IT資産管理が注目を集めているのは、より一層のコスト削減を迫られる企業が、増え続ける管理コストを少しでも減らそうと考え始めたからです。最近ではIT資産管理を効率化するための専用ツールも登場しています。

 IT資産管理の重要性を実感するのは、システムに何らかのトラブルが発生した際や、システムの更新時期が来たときです。IT資産管理が徹底できていなければ、パソコンが故障したときに素早く対応できないし、リース期間の終了時には更新作業が滞ります。導入したOS(基本ソフト)やソフトの利用状況を把握していないと、バージョンアップ作業やライセンス管理が行き届かなくなり、思わぬトラブルに巻き込まれる恐れまで生じます。

◆事例
コストと結びつけてIT資産管理

 日本たばこ産業(JT)は、社内にある約600台のサーバーと1万1000台を超えるパソコンを管理するために、米ペレグリンシステムズが開発したIT資産管理ツール「AssetCenter」を利用しています。IT資産の調達から廃棄までの「ライフサイクル」をすべて管理し、常にトータルのコストを割り出します。

 このためにパソコンのリース終了時には、運用・保守費用を含めた総コストまで見て、契約を延長すべきか、あるいは新規のパソコンに入れ替えたほうがよいかを判断できます。総コストに基づいた意思決定ができるのです。

 JTによれば、IT資産管理ツールは、ほかにも多くの場面で役立っているといいます。例えば、全社のIT資産を一目で確認できるため、社員の問い合わせに応じるヘルプデスク作業を大幅に減らすことに成功しました。情報システムの再構築を検討するときも、計画の立案には欠かせないIT資産の利用状況を瞬時にまとめられたそうです。

(川又)