図 HSDPAのしくみ 従来のW-CDMAに四つの工夫を加えることで,伝送速度を最大14.4Mビット/秒まで高めるとともに,基地局全体のスループットをできるだけ上げる。
図 HSDPAのしくみ 従来のW-CDMAに四つの工夫を加えることで,伝送速度を最大14.4Mビット/秒まで高めるとともに,基地局全体のスループットをできるだけ上げる。
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 HSDPAとは,第3世代携帯電話(3G)の基盤技術「W-CDMA」(wideband code division multiple access)を拡張した,高速データ通信用の技術である。NTTドコモが,FOMA向けの新高速通信サービス「HIGH-SPEED」の基盤技術として採用した。

 HSDPAでは,W-CDMAに改良を加え,下りのデータ伝送速度を大幅に向上する。もともとW-CDMAは,速度が一定で通信量が少ない音声通話をできるだけ多く収容するのに向く。それに対し,HSDPAは,バースト的に発生するデータをできるだけ効率良く伝送しようというものだ。

 新サービス「HIGH-SPEED」では,下り方向の最大伝送速度を,従来のFOMAの384kビット/秒から約10倍の3.6Mビット/秒に高速化した。サービス開始時点で基地局側は,HSDPAの仕様上の最大伝送速度である14.4Mビット/秒まで出せる設備を用意する。端末が対応すれば,10メガ超のサービスを提供できるという。

 では,具体的にどうやって高速化したのだろうか。NTTドコモによれば,HSDPAには四つの工夫があるという。それは,(1)共有チャネル,(2)適応型変調符号化,(3)ユーザー・ダイバーシティ,(4)ハイブリッドARQ(automatic repeat request)──である。

 (1)の共有チャネルは,FOMAとHSDPAで5MHz幅の無線チャネルを共有するしくみのこと。HSDPAについては,無線の状態に応じてユーザーごとに効率的に帯域を割り当てる(図)。FOMAでは10msだったタイム・スロットを,HSDPAでは2msに短縮した。さらに拡散コードを利用して1スロットを15の帯域に分割する。この帯域をユーザーごとに適切に配分することで,効率的な帯域割り当てを実現する。(2)の適応型変調符号化は,受信端末の無線環境に応じて,最適な変調方式と符号化方式を選択する技術だ(図)。

 (3)のユーザー・ダイバーシティは,(1)共有チャネルの運用方法である。スロットごとに,無線の状態が良い端末にできるだけ多くの帯域を割り当てる。こうすることで,基地局の下りのスループットの合計を最大にでき,全帯域を最も効率良く使えるという。最後の(4)ハイブリッドARQは,データ・エラーを減らすことによって再送の回数を減らし,伝送速度や遅延を抑えるための技術である。

 

携帯電話の高速通信技術「HSDPA」の仕様上の最大伝送速度はどれでしょうか。