図 スパニング・ツリーを高速化したRSTP
図 スパニング・ツリーを高速化したRSTP
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 RSTP(rapid spanning tree protocol)とは,LANでやりとりしているデータ(MACフレーム)が永遠に回り続けることを防ぐ「スパニング・ツリー」という機能を高速化するためのプロトコル仕様のこと。「速い(rapid)STP」という意味である。

 STPは,ループを防止するという目的のほか,耐障害性を向上させるためにも使われる。障害発生時に障害経路をう回できるように,わざとネットワークにループ構成となる部分を作っておき,通信を受け付けていなかったポートをオープンして,通信を継続させるわけだ。

 ただし,障害発生時に経路を変更するというSTPには,一つ大きな問題点がある。それは,ネットワークの構成によっては,経路の切り替えに約50秒もの時間がかかってしまうことだ。経路切り替えにこれだけの時間がかかってしまうのは,LANスイッチの切り替え作業にかかる時間がタイマーによって決まっているから。ネットワークの構成に変更があると,LANスイッチはタイマーに沿って順に切り替え作業を実行する。この切り替え作業をしている間,対象となるすべてのLANスイッチの通信が止まってしまう。

 そこで,この切り替え時間を短縮するために考えられたのがRSTPである。規格はIEEE802.1wとして標準化され,現在はIEEE802.1Dに統合されている。

 RSTPでは,経路の切り替え作業にタイマーは使わない。経路の切り替えに関係するLANスイッチで情報を直接やりとりし,切り替え後のポートの状態を判断することで,切り替え時間を短縮した。RSTPで切り替え情報をやりとりするときの例を見ていこう(図)。

 LANスイッチAとLANスイッチBの間のケーブルが切れたとする(図の1)。するとLANスイッチBは「ルート・ブリッジへの道がなくなりました」とスイッチCに通知する(同2)。するとスイッチCはスイッチBにつながるブロッキング・ポートを有効にした方がいいと判断し,「それでは私のブロッキング・ポートを有効にしていいですか?」とLANスイッチBに提案する。この提案を受け取ったスイッチBは,「OKです」と同意のメッセージを返す(同3)。この返事を受け取ったLANスイッチCは,即座にブロッキング・ポートをフォワーディングに移行してデータの転送を開始するのである(同4)。以上のやりとりを実現するにあたってRSTPでは,STPで使う制御用フレーム「BPDU」(bridge protocol data unit)の内容に改良を加えた。

 

LANがループ状になるのを防ぐプロトコル「スパニング・ツリー・プロトコル」(STP)の改良版「RSTP」の「R」は何の略でしょうか。