図 SNMPを使ったネットワーク管理の概要
図 SNMPを使ったネットワーク管理の概要
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 SNMP(simple network management protocol)とは,ネットワークを管理するためのプロトコルである。1990年にIETF(Internet Engineering Task Force)によって標準化され,TCP/IPネットワークで管理に必要な情報をやりとりする。

 SNMPを使ったネットワーク管理は,SNMPマネージャ,SNMPエージェント,SNMPプロトコル仕様,MIB(management information base)──という四つの要素の組み合わせで成り立っている(図)。

 SNMPマネージャは,SNMPを使った管理の中心となるもので,その実体はコンピュータにインストールされたソフトウエアである。ユーザーの代わりになってSNMPエージェントと通信し,集めた情報を適切に加工して管理者に渡したり,SNMPエージェントが持っている情報を書き換えたりする。

 SNMPマネージャに対して情報を提供するのがSNMPエージェントである。その実体はルーターなどに組み込まれたソフトウエア・モジュールで,「SNMP対応機器」といえば一般にこのSNMPエージェント機能を備えたネットワーク機器のことを指す。代表的なSNMPエージェントは,ルーター,LANスイッチ,プリント・サーバーといったLAN機器である。このほか,UPS(無停電電源装置)やプリンタ,パソコンもSNMPエージェントになる。LAN上に流れたデータを集めて記録しておく専用装置(RMONプローブ)もある。

 SNMPマネージャとSNMPエージェント間で情報をやりとりする手順や使うメッセージの種類,パケットの形式などを定めたものがSNMPプロトコル仕様である。仕様はインターネットの標準技術を収めた文書である「RFC」で規定されていて誰でも無料で入手できる。

 SNMPマネージャがSNMPエージェントから情報を得るためには,SNMPプロトコル仕様だけでは足りない。実際にやりとりする機器の情報を示すデータの構造やパラメータの意味なども統一しておく必要がある。相手と電子メールをやりとりできても,使う言語が異なれば意思疎通が図れないのと同じイメージだ。そこで,SNMPエージェントが持つ機器の管理情報を共通フォーマットとして具体的に定義したものがMIBである。

 SNMPエージェントは,機器が備えるさまざまな情報を,このMIBのデータとして持っている。例えば,リピータ・ハブならコリジョン数やエラー・フレーム数,LANスイッチならバーチャルLANの設定情報,ルーターならルーティング・テーブルの情報といった具合である。一方,機器の名前,起動してからの経過時間,設置場所のように,ほとんどすべての種類の機器で共通して持っているべき情報もある。このように,機器に共通する情報や,種類ごとに持つべき情報を分類しているのがMIBである。そして,SNMPマネージャから要求があると,SNMPエージェントはデータベースから適切なMIBのデータを読み出してマネージャに送信する。

 なお,SNMPマネージャとSNMPエージェントとの間の通信には「ポーリング」と「TRAP」という二つの基本動作がある。ポーリングは,SNMPを使ったネットワーク管理において最も基本的かつ重要な動作といえるもの。SNMPマネージャが定期的にエージェントから管理情報を読み出す形の動作だ。SNMPマネージャとSNMPエージェント間の日常的な情報のやりとりは,ほとんどこのポーリングを使って処理される。

 もう一つのTRAPは,逆にエージェントからマネージャに情報を通知する形の動作である。一般に何か問題が起こったときだけそのことを伝えるために使われ,何もないときには使われない地味な存在である。しかし,いざトラブルが起こったときには,このTRAPがトラブル解決の強い味方になってくれる。


 

次のうちネットワーク管理でよく使われるのSNMPのポーリングの説明として正しいものはどれでしょう。