図1 「プレゼンス」とは「今の状態」を表す用語である
図1 「プレゼンス」とは「今の状態」を表す用語である
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図2 プレゼンス機能付きのIP電話機では,プレゼンス情報を活用して最も適切な手段で連絡をする(イラスト:なかがわ みさこ)
図2 プレゼンス機能付きのIP電話機では,プレゼンス情報を活用して最も適切な手段で連絡をする(イラスト:なかがわ みさこ)
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 プレゼンスとは,「相手が今どういう状態にあるのか」を表す用語である(図1)。コミュニケーション・ツールを使って相手と連絡をとりたいときに,相手が今どのような状態にあるのかを教えてくれるというものだ。これにより,ユーザー同士のコミュニケーションを円滑にする。

 プレゼンス(presence)とは,そもそも「存在」という意味の英単語である。例えば,「ユーザーが今,パソコンの前に存在するか」といった「存在」状況を示す。ただし,最近のネットワーク関連の機器やソフトでいう「プレゼンス」とは,単に「存在しているかどうか」だけではなく,もう少し広く「今どういう状態にあるか」という情報を表すようになっている。

 プレゼンス機能を搭載したソフトウエアの代表は,「Windowsメッセンジャー」や「Yahoo!メッセンジャー」といったインスタント・メッセージ・ソフト(IMソフト)である。IMソフトは,インターネットを介して特定の相手と文字やファイルをやりとりする機能を持ったツールである。相手とリアルタイムにコミュニケーションをとるIMソフトではプレゼンス機能は欠かせない。IMソフトの画面には,登録した相手が「オンライン」か「オフライン」というこの相手の状態を示す情報が表示される。これがプレゼンスである。

 さらに,Windowsメッセンジャーでは,ただ単に「オンライン」というだけではなく,ユーザーの申告に基づいて,「一時退席中」や「取り込み中」といった細かい状態を表示できる。「一時退席中」なら,しばらく待てば相手は席に戻りそうだということがわかる。「取り込み中」なら,相手は席にいるけど何か仕事をしていて忙しいことが想像できる。これにより,「もう少し後でメッセージを送ろう」とか「メッセージではなくメールを送ろう」などといった判断ができる。

 プレゼンスは,個人向けIMソフトだけではなく,企業向けの機器やソフトに積極的に取り入れられている。典型例は,プレゼンス機能付きのIP電話機だ(図2)。プレゼンス機能付き電話機には,ネットワークにつながるユーザーが申告した「在席中」や「外出中」といったプレゼンス情報が表示される。こうしたプレゼンス情報を基に,在席中なら直接相手に電話をかけ,会議中ならメッセージを送り,外出中なら本人の携帯電話にかけるといった対応を取ることができる。電話の不必要なかけ直しがなくなり,伝言メモを書く時間が省けるなど,効率的に業務を進められる。

 プレゼンス情報をネットワークでやりとりするための標準仕様もある。IP電話の呼制御で使われるSIP(session initiation protocol)上でプレゼンス情報をやりとりする「SIMPLE」(SIP for instant messaging and presence leveraging extensions)という仕様がそうで,最近のIP電話機はこうした標準仕様を実装したものが増えている。

 プレゼンス情報を使うシステムには考慮すべき特有の課題もある。それは,各自が自分のプレゼンスを申告する必要があるところである。機器やソフトに機能があっても,それを使うユーザーが正しくプレゼンス情報を設定しなければ意味がないが,これは面倒な作業である。そこで最近は,パソコンのキー入力で在席や離席を自動的に判断したり,スケジュール管理ソフトと連携してプレゼンス情報を通知するシステムなどが実用化されている。