企業が適正で効率的な経営を行うための組織設計やチェック体制のこと。取締役会・委員会などの機関や内部統制システム、リスク管理体制などが含まれる。

 昨年10月に発覚した西武鉄道の有価証券報告書虚偽記載問題では、同社は株主の名義を偽装し、上場基準を満たすように見せかけていました。結果として西武鉄道株は上場廃止になり、株価の下落で一般の株主は大きな損害を被りました。西武鉄道は過去に、総会屋への利益供与に揺れたこともあります。絶大な権力を持つ経営トップの下で、不誠実な行動が繰り返されてきました。

 「コーポレート・ガバナンス(企業統治)」は、企業が適正で効率的な経営を行うための組織設計やチェック体制を指す概念です。西武鉄道の不祥事は、元をたどればコーポレート・ガバナンスの欠如に起因します。長年同じ会計士が会計監査を担当するなど、法制度上のガバナンスが機能しなかった面もありました。

◆動向
社外の目でチェック

 大企業の有価証券報告書には通常、「コーポレート・ガバナンスの状況」という項目があり、「会社の機関」「内部統制システム」「リスク管理体制」などの内容が記載されています。

 コーポレート・ガバナンスでまず注目されるのが機関設計でしょう。日本企業では、ガバナンスの強化策として社外取締役を任命して社外の目を取り入れたり、執行役員制度を導入して経営の執行と監督を分離するといった手法がよく使われます。より徹底した形態として、2003年には米国型の「委員会等設置会社」が制度化されました。形がい化が指摘されている監査役を置かない代わりに、社外取締役を中心とした指名・監査・報酬の3つの委員会を設置し、経営を厳しくチェックする仕組みで、ソニーやイオンなどが採用しています。

 しかし、いくら機関を整備しても、委員会などの監視が及ばない組織内部で巧妙な不正が行われる可能性があります。そこで最近では、内部統制システムも重視されます。業務手続きを必ず複数の社員が確認するようにしたり、内部監査機能を設けてけん制を働かせるといった内部統制によって、適正な業務運営を担保するのです。

◆事例
独立した監査部門設置

 新生銀行はコーポレート・ガバナンスの要として、強力な「監査部」を持ちます。監査部長の解任権は社長ではなく取締役会にあり、社長の不正に対しても独立して内部監査を行えます。

 帝人は、委員会等設置会社ではありませんが、これに似た「アドバイザリー・ボード」を1999年に設置しています。社外の有識者が社長の進退などを助言する仕組みです。CHO(グループ人財責任者)、CSO(グループ経営計画責任者)など分野ごとに最高責任者と支援スタッフを置く体制も特徴です。