米モトローラが日本の品質管理手法をヒントに編み出した経営改革手法。改善チームを立ち上げ、各種データを集めて統計的に分析。問題を抱えた業務や製品を改善する。

 「シックスシグマ」は、90年代後半に米ゼネラル・エレクトリック(GE)が導入し、大きな収益効果や経費削減効果を上げたことで、脚光を浴びるようになった経営改革手法です。シックスシグマ(6σシグマ)はもともと、「100万回のうち3~4回だけ欠陥が起こる」という意味の統計用語です。経営改革手法としてのシックスシグマには、製品やサービスの品質のばらつきを抑えられるように業務プロセスを改善することによって、コストを削減したり、売り上げを拡大する狙いがあるのです。

◆効果
人材育成にもなる

 企業向けのパソコン販売会社が2社あったとします。両社とも障害対応の電話連絡を受けてから平均3時間で駆けつけます。一見、両社の経営品質は同等ですが、顧客の視点を重視するシックスシグマでは到着時間のばらつきが少ない方を優れていると見ます。

 シックスシグマでは、まず「チャンピオン」がテーマを選定し、改善チームのリーダーとなる「ブラックベルト」を任命します。ブラックベルトは様々な分析ツールを駆使しながら、チームメンバーと一緒に改善プロジェクトを遂行。改善策を現場に実行させる時に障害があれば、チャンピオンが支援します。部課長クラスがブラックベルトに、本部長や経営陣がチャンピオンになるケースが一般的です。

 チーム活動は通常、「DMAIC」(ディーマイク:定義-測定-分析-改善-管理)の5ステップを踏みます。勘と経験と度胸に頼ってその場しのぎの改善策を立てるのではなく、VOC(顧客の声)やデータを集めて、問題を抱える業務プロセスのシグマ値やばらつき、COPQ(低品質さに起因する無駄なコスト)などを算出。科学的根拠に基づいて、抜本的な改善策を導き出します。

 多数のプロジェクトを立ち上げ、多くの社員がシックスシグマ活動を経験すれば、「経営課題に対して、顧客視点で科学的に改善策を練る」という習慣が企業文化として根付いたり、リーダー人材の育成につながります。財務効果だけでなく、この点を高く評価する企業が少なくありません。

◆事例
J&Jが軌道に乗せた

 1999年ごろから日本企業での導入も増えました。ただし、成功事例はさほど多くないようです。研修や事務局の整備、経営陣の強力な支援など、超えるべき壁がたくさんあるのです。外資系企業の日本法人での導入も進んでいます。例えば米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の日本法人が2003年7月から本格的に導入を開始。昨年度に2億円のコスト削減効果を出し、今年度は5~6億円の売り上げ増を見込んでいます。