大学の研究開発で生まれる成果を産業分野で生かすために、特許の出願などを行う組織。1998年8月施行の大学等技術移転促進法により整備が進められてきた。

 産学連携というテーマは古くからありましたが、研究開発分野での推進を目的として誕生したのが「TLO」です。技術移転機関ともいいます。1998年8月に施行された大学等技術移転促進法により整備が進められてきました。お手本は1980年に米国で制定された「バイ・ドール法」です。TLOには、国家の科学分野における競争力を高める狙いがあります。

◆効果
研究成果を事業に

 TLOの役目は、大学や研究所で開発された新技術を特許化して、企業にライセンスを付与することです。ライセンスを付与された企業は、その技術を基に新規事業を立ち上げたり、既存の製品に改良を加えるなどして、収益を上げます。その一部が大学に還元されることで知的創造のサイクルが生まれます。

 TLOは、大学等技術移転促進法に基づき事業計画が承認・認定された技術移転事業者のことですが、文部科学省および経済産業省の承認を受けたものが「承認TLO」、申請者が管轄の省庁による認定を受けたものが「認定TLO」です。

 前者は大学や研究所の教官や研究者個人が有する特許を扱い、後者は国立大学や国の研究機関が特許を持っています。現在、全国で41のTLOが存在します。そのうち8つは大学内の組織であるため学校法人です。残り33のTLOは財団法人や株式会社、有限会社と様々な組織形態です。

◆現状
数は増えるも9割は赤字

 昨年5月、経済産業省はTLOの財務や活動実態について初めての調査報告書をまとめました。それによると補助金などの公的な支援を差し引いた2003年度の実質的な収支は、調査した31機関のうち28機関が赤字と判明しました。TLO全体の特許によるロイヤルティー収入は5億5000万円ほど。目標とする米国の約10億ドル(約1100億円)にはほど遠い結果でした。国内のTLOによる特許出願件数では国内の1679件に対して、米国は6509件で約4倍。ライセンスの単価は国内の104万円に対して、米国は2674万円で約26倍。ただし、米国のTLOも1992年の時点では約100億円にすぎませんでした。国内のTLOもこれからの成長に期待がかかります。

 2004年6月、経済産業省は既存のTLOの強化などを目的に「特定分野重点技術移転事業者」(通称、スーパーTLO)として東京大学TLOや関西TLOなど7つのTLOを選びました。文部科学省でも昨年7月に東京大学や京都大学など6大学を「スーパー産学官連携本部」としました。両方とも成功事例を増やして日本の科学力の底上げにつなげるのが狙いでしょう。